カナダ人の臨床心理学者、ジョーダン・ピーターソンの本。YouTubeでもおなじみ。

世界的なベストセラーとなった本だが、個人的にはとても読みづらかった。翻訳本は時に絶望的なほど読みにくい。

著者はこの過酷な世の中でいかに生き抜いていくべきか徹底的に考察し、明確な言葉で示そうと試みている。

生物学、心理学、政治、歴史、聖書、古代の神話や寓話、映画やアニメの物語、著者自身や友人、家族の体験等、引用元は多岐に渡っている。さらにドストエフスキーやニーチェの話まで出てくる。
しかし、そのために話が過度に哲学的になり冗長になっている印象が否めない。

困難に滅気ずに信仰心と向上心を持って生きていくこと、強い意志やサバイバル精神を持って人格を練り上げていくこと、保守的な安らぎを大切にし一日一日を大切にすること、子供に対して過保護に接するのではなく逞しく育てるように心がけること。これらを説く著者の主張自体は個人的には大いに共感できるし興味深い。

著者は進化論を信じているので福音主義のクリスチャンではないようだが、それでも言葉の端々で信仰心の厚さが伺える。事実、全体を通して聖書からの引用が非常に多い。
私自身がクリスチャンなので、その点もとても嬉しかった。

ただこの本を自己啓発本のようなつもりで読み始めると出鼻を挫かれる(私はそうだった)。普段から高尚な哲学本を読み慣れている人なら楽しめるかもしれないが、一般の人には少々とっつきにくい文体と言葉遣いが多い。シンプルな意見を言う為に何故これほど回りくどい言い回しをしなければならないのか?読んでいて少し憂鬱にさえなった。