(屋号の記載、澤瀉屋は省略しました~)

小栗栖の長兵衛(おぐるすのちょうべえ) 
・長兵衛…市川中車
・馬士弥太八…市川右近
・妹おいね…市川笑三郎
・堀尾茂助…市川月乃助
・猟人伝蔵…市川弘太郎
・父長九郎…市川寿猿
・巫女小鈴…市川春猿
・僧法善…市川猿弥
・七之助…市川門之助(瀧乃屋)
●香川さん、いや、中車さん、なかなか様になってました~。想像以上でも以下でもなく、なんと言うか、そこにいることに不自然さは感じず、あるがままな感じ。映像で知っている“香川照之”という役者の芸風も感じる演技で、香川さん=中車さんらしい長兵衛になってたんじゃないかなー。笑いの誘い方もあざとさは無く、心地よく楽しめました。
…まぁ、楽しめたのは新歌舞伎だからに他ならないだろうけどね。そして、その“新歌舞伎だからいけた”ってことが顕著だったのが、村民入り乱れての乱闘シーンになったとこ。それまでの“演劇”的な表現から、リアルではない“様式”で見せる乱闘。間合いの取り方というか邦楽器の音や拍子の捉え方が、中車さんと他の面々とは明らかに違った。なんだか奇妙なスローモーションで…やはり日本舞踊の素養がないと“歌舞伎”にならないんだなーと改めて感じてしまいました。
とはいえ、これまでの映像作品での見せてくれていた化け方を考えれば、歌舞伎でも次の役以降、どう進化するか楽しみです。“香川照之”から“市川中車”にアップデートしました。

■初代市川猿翁 三代目市川段四郎 五十回忌追善 口上(こうじょう)
 二代目市川猿翁
 四代目市川猿之助 襲名披露
 九代目市川中車
 五代目市川團子 初舞台
・幹部俳優出演
●色々と思うところもあり、最近澤瀉屋主体の公演を観ていなかったけど、やはり自分が歌舞伎を見始めたきっかけであり、一番熱く観ていた面々だから、これまた色々な思いが入り交じり、涙、涙、涙。
亀治郎改め猿之助の「ここにいない方々」でまずやられました(客席は軽口と捉えたのか笑いが起きてたけど…)。観劇歴十数年の私ですら、何人かの旅立ちを経験しました。独自路線の芝居を打っていた澤瀉屋と共演していた数少ない大看板でいえば、宗十郎さんや芝翫さん。亀治郎(今回はこれで通させて~)は、猿之助劇団を離れてからは、今年旅立たれた雀右衛門さんにも教えを乞うていましたよね。雀右衛門さんは年齢のことを考えれば…にしても、藤十郎さんのシャッキリっぷりからすると、宗十郎さんや芝翫さんは、今回の襲名披露口上に列座していることも十分あり得たのではないか、と思ってしまいます…言っても仕方ないことですが。
特筆すべきは、團子ちゃんの居住まい! 日本舞踊のお稽古を(もっと)小さい頃からやっているだけのことはあり、叩頭している間、ときどき居住まいを正していたけど、着物の袖さばきが妙~にちゃんとしてて(笑)。“アンファンテリブル”と言われた亀治郎の小さい頃を彷彿とさせる感じ(もちろん同い年なので実際は知らないけど)、とでも言いましょうか。早く芝居を観たいです。
そして、満を持しての猿之助改め猿翁登場! …正直、体の自由が利かなくなった猿之助さん(こっちもこれで通させて~)は見たくなくて、記者会見やお練りの様子も、あまり直視しないでここまで来ました。けど、そんな姿になっても、内なる熱さは何一つ変わっていないんだということを、自由にならない口でも、自在に動かせない体でも、感じさせてくれました。精一杯声を張り、眼光鋭く、(動けない結果にしろ)たっぷりと客席に気を飛ばす猿之助さんを見ることができて、今では本当によかったと思ってます(泣)。

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)川連法眼館の場 
・佐藤忠信
 忠信実は源九郎狐…亀治郎改め市川猿之助
・駿河次郎…市川門之助
・亀井六郎…市川右近
・飛鳥…坂東竹三郎(音羽屋)
・川連法眼…市川段四郎
・静御前…片岡秀太郎(松嶋屋)
・源義経…坂田藤十郎(山城屋)
●豪華な四の切でした~。これぞ襲名興行って感じです。例によって“葵”マジックにかかりましたが(笑)。
『亀治郎の会』で見ているので、目新しさは無く。「あぁ、“猿之助”なんだよね、今はもう」という感慨をに一瞬耽ったけど、次の瞬間には「別に何が変わるって訳じゃないんだよなぁ」と。亀治郎本人が何かで言っていたけど、「新しい名前は、新しい洋服に袖を通したような感じ。なんだか馴染まないな、というような」というのがホントそんな感じ。見ているこっちもそんな感じでした。
『亀治郎の会』で見たときのほうが、私は好きだったかも。というか、見慣れた猿之助さんの忠信に近かったのかな、その時は。今回は再挑戦だったから、亀治郎の忠信たれ、という作り方だったのかな、と。考えてみると、今回に限らず、亀治郎は初演の作り方のほうが私は好きなのかも。色々と工夫されて再構築された役作りよりも、直感で捉えた素直な役作りのほうが私も素直に受け止められるのかもなー(…結構保守的?な見方してるんだな、私)。結局は見る人の好みですから。
これから何度となく上演されるのは間違いない演目なので、次に観るときにはどんな感想を持つことになるのか、私自身が楽しみです。

★思い入れのある役者の襲名興行は初めてだったので、口上の感想が一番長い(笑・まだまだ書けるぜ)。自分では意識してなかったけど、久しぶりのお祭りに気持ちはとっても上がってたみたいで、初日から今日の観劇までたった5日しか経っていないのに、やっとこの日が来た、という思いがしてました。昔は初日観劇とかしょっちゅうだったから(まぁ、それができる環境だったってのもあるけど)、その頃の気持ちにちょっと戻ってたみたい。亀治郎は「襲名しません」宣言してたから、澤瀉屋で襲名興行が見られると思っていなかったってのもあるね。単純に嬉しいし目出たい。
口上、2度目の涙は、新猿之助の「~一門の皆様の推挙もあり」というところで、でした。劇団を離れた亀治郎を一門の新たな頭領としてみんなが「亀ちゃんおかえ りー」って(そんな軽いノリではないでしょうが…)受け入れたんだなーと。もちろん喧嘩別れで離れたわけではないけれど、猿之助の部屋子たちと段四郎の長男、という後継で言えば2つの流れがあった澤瀉屋。ずっと一緒にやっていれば順等に亀治郎が後々段四郎か猿之助になり、いずれは一門の頭領になるで問題なかっただろうけど、段四郎・亀治郎親子が劇団から離れ、その後の猿之助の病気とともに減った観客(その一人が私です)。観なくなった私が心配するのもアレでしたが、猿之助筋の澤瀉屋はどうなるのだろう…右近さんが? いやいや、それはちょっと…とか、あー香川照之が今からでも歌舞伎に来たらイイのになー、彼の芸風と器用さなら今から歌舞伎も全然行けそうだよねー、でも、それは望めない話だろうけどねー、なんて友人と話していた数年前。まさかこんな日が本当に来るなんて。
猿之助さんの下で一生懸命だった右近さん、猿之助さんの代わりに一門(歌舞伎組)を束ねなければと一生懸命だった右近さん。肩の荷が下りたのかな、なんだかとてもよかったです。本来こういう役者さんなんだな、と感じました~。
新生・澤瀉屋。歌舞伎の楽しみが一つ戻ってきましたよ♪