STUDIO-RELEIVE #007「道具の持つ二面性」

物には二面性ってのがあるよな。
使い方ひとつで人の役に立つこともあれば
誰かを傷つけることもある。
ライト兄弟が発明した飛行機の技術と、
アインシュタイン博士の相対性理論。
どちらも人類にとって大きな発展をもたらしたのは、知っての通り。
飛行機を使えば、ホノルルだろうがニューヨークだろうが、ひとっ飛びで行けるし、相対性理論を応用したGPSシステムを使えば、浮気性な恋人の居場所も、即座にロックオン出来る。
だが、一歩使い方を間違うと
どんな事が起こるのか?
飛行技術と相対性理論。
このふたつで
広島と長崎は、原爆を落とされた。
まぁこれは極端な話だけど、使う人間の思考次第じゃ、道具は人の命まで奪うとんでもない凶器になるってこと。
そいつは、俺たちが今この手に持ってるスマホも同じだ。
もともと俺はスマートフォンなんて嫌いだったのだが、そんな人間でさえもう手放せなくなっている。
小説・マンガ・ニュース・映画・テレビ、おまけにカメラや文房具を兼ねた唯一の存在で、すべてがひとつになったトータルメディア&ツールなのだ。
本を読む時間なんてほとんどゼロのくせに、現代の日本人がネット動画に費やす時間は一日平均84分なのだとか。
毎日長編映画一本を見続けているのと同じだ。
子供にはスマホを持たせたくないという親の気持ちもよく分かるよ。
俺はそろそろ廃刀令のように、スマホ禁止令が出されてもおかしくないと思うのだが、そんな空気は一ミリもないみたいだ。
考えてみると、俺たちは原子力発電所の制御システムより複雑なOSを積んだスマートフォンを、つまらないことばかりに使っている。
頻繁に検索するのは、ブラック企業から逃げ出す手段とパワハラ上司に対する仕返しの方法。あとは人気俳優の薬物疑惑や清楚系女優の不倫報道ってトコ。
だけど、病んだ心の救い方を探すのは間違いじゃないと思うよ。知らない誰かの言葉に胸打たれて、一歩でも前に踏み出せるなら、それに越したことはない。
良い人生とは、良い検索。
良いものを探す奴は良いものを。
悪いものを探す奴は悪いものを見つける。
スマホを使おうが自分の足を使おうが
探し続けることが大事なのかもな。
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時にSNSやテレビでは、ひとつ間違った発信をしてしまい、とたんに骨も残らないほど焼き尽くされ、粉々になるまで叩かれるヤツがいる。
スマートフォンを作れるほど進化した現代人の得意技、大炎上ってやつだ。
弱みを見せたやつを寄ってたかって殴り、気の毒な誰かが水に落ちたら、溺れ死ぬまで棒で叩く。その後は遺体が二度と浮かんでこないように、水底まで皆で踏みつけて沈めてしまうのだ。
薬物は悪。不倫は悪。
税金の無駄遣いも公約違反も悪。
顔の無い大勢の野次馬の中の
誰かが振るう正義の鉄槌(てっつい)。
そんな安い正義や怒りの元は、ネットの見出し一行だったり、当人のコンプレックスだったり、格差社会でままならない人生への不満だったりする。
知らないやつから正義を振るわれた炎上元は、いい迷惑だよな。
こんなガラスの板が、誰かの頭に火を放ったり、集団リンチのような使い方をされてるんだ。
俺たちは道具の二面性について
もっとよく考えるべきだと思うよ。