チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

ショスタコーヴィッチ:交響曲第五番 ニ短調 op.47 「革命」

 

指揮は尾高忠明さん、ソリストで前田妃奈さん。尾高さんの指揮を静岡で見られるとは、感無量になる。

 

前半は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ドヴォルザークの協奏曲の予定だったが、チャイコフスキーに変更。そのため、意図してかは分からないがロシアプログラムになった。

 

ステージに満面の笑みで入られた前田さん、前日の三島公演ではドレスが直前に壊れるハプニングがあったらしく、静響の女性メンバーさんらのお力で乗り切ったとの投稿がXに。清水公演では、前日から衣装チェンジし、華やかさと淑やかさが合わさった印象のドレスに。

 

一音目を弾き始めると前田さんの表情は一変、ホールに緊張感が走る。チャイコフスキーの協奏曲は、オケの序奏で穏やかな空気を作ったかと思えば、独奏のカデンツァで緊張感が走るため、激しい感情の起伏を生み出す。カデンツァの後は、再び穏やかな空気が流れ出す。印象的だったのは、指揮の尾高さんとコンマスの藤原さん。尾高さんは、優しい表情でソリストを見守り、藤原さんは独奏に体を揺らす。2月に藤原さんの独奏でこの曲を聴いたこともあり、静響×コンマス藤原さんがバックでのチャイコンは、また感慨深いものがあった。

 

前田さんは、2楽章をたっぷりと歌い上げる。技巧的な要素が散りばめられた作品ではあるものの、緩徐楽章での美しい旋律により、ロシアの壮大な自然が浮かび上がる。チャイコフスキーらしさが存分にあらわれる作品である。全楽章通して印象的だったのは、煌びやかな高音と深みのある低音。上から下まで満遍なく鳴る音色は大変印象的だった。後から判明したことだが、前田さんが弾かれた楽器は1732年製のストラディヴァリウス、流石は名器という音色だった。

 

3楽章ではリズミカルな旋律が流れ出す。前田さんの高い技術を全身で感じ取ることができた。フィナーレでのオケとの掛け合いで、更に笑みが増した前田さんを見て、温かい気持ちになることができた。アンコールは、ヨアヒムのスコティッシュ・メロディ。豊かなヴァイオリンの音色がホールに響き渡った。

 

続く