クロス・ファンクショナル・ビューか。


今号も買いだね。



「グロース・ペイン」(成長の痛み)という言葉があります。


これは、一山当てた起業家がその後、企業規模を拡大させていくなかで味わうコンフリクトやジレンマ、自信喪失感のことですが、特定分野でキャリアを積んできた人が昇格したり、他部門に異動したりした際にも、同じような苦痛を経験するといわれています。


その原因は、求められるスキル・セットが変わるからにほかなりませんが、そのほかにも、さしたる試練を経験していなかったり、組織の不文律にうとかったり、会社から公式に与えられた権限をさっそく行使してみたり(権限は周囲に認められて、初めて行使を許されるものです)といった経験値の問題も挙げられます。

そして、何より問題なのが「モノカルチャー志向」(単一志向)です。
このような視野狭窄症は、これまでのキャリア開発がもたらした副作用──昨今のスキルに偏った能力開発もこの傾向に棹差していると思われます──でもあるため、情状酌量の余地があると思われますが、そのせいでつまずき、不本意なレッテルが貼られてしまうことが珍しくありません。


今号で新訳を施し再掲載したトム・ピーターズの「リーダーの仕事」は、『エクセレント・カンパニー』が上梓される三年前に書かれた論考ですが、リーダーがなぜリーダーたりうるのかは、椅子が温まる暇もなく、社内外を動き回り、短い時間とはいえ、さまざまな会議や打ち合わせに顔を出しているからであるという観察は、なかなか意味深長です(ひるがえって、彼は「リーダーは問題解決者ではない」とも指摘しています)。


つまり、断片的な知識や情報とはいえ、これらが企業活動全体を網羅しており、しかも日々更新されれば、おのずとホリスティック思考が宿ると指摘しているわけです。


ピーターズに限らず、名経営者と呼ばれる人たちの自伝・評伝に触れれば、リーダーには、時には論理的に矛盾し合う複数の価値を受け入れる態度、すなわち「プルラリズム」(多元主義)が必要であることがわかるはずです。


このプルラル志向(かつての「複眼思考」、最近ならば「クロス・ファンクショナル・ビュー」といったところでしょうか)とでも呼ぶべき能力は、リーダーになる前に育成可能なはずです。一種の習慣ですからね。ですが、時間がかかりそうです。

モノカルチャー志向は短期に成果を出しやすいですが、これが染み込んでしまうと、デジタルで線形思考の人材になってしまうのではないでしょうか。


そのためにも、早くからリーダーシップ教育を施すのがよいのではないかと思う次第です。


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 02月号 [雑誌]
¥2,000
Amazon.co.jp