ハサミ
中学2年生の学校の帰り道、大きなハサミを拾いました。
植木職人が使うようなハサミで、道のど真ん中にぽつんと置かれていました。
『おや??』と拾い上げ、ずっしりと重いハサミを両手で開閉してみます。すると、ハサミが自らの意志で動いているかのように、実に自然と動きます。これまで味わったことのない感覚です。
『こ、これは!』
思わず興奮し、何でもいいから切ってみたくなりました。
何か切るものはないかと探していたら、太めのハリガネが落ちていました。
おそるおそる切ってみると、切っているという感覚はまったくないのに、ハリガネがプツンと切れました。
『こ、これは!!』
興奮は一気に高まります。もっと切りごたえのあるものはないかと、ハサミを持ちながら上落合公園周辺をぐるぐると歩き回りました。
大きなハサミを持った中学生がきょろきょろしていたら、それは悪さをする前兆です。
ふと、木の枝に目がとまりました。親指くらいの太さのある枝です。カバンを置いてちょっと木によじ登り、木の枝をハサミで軽く挟みます。呼吸を整えて、『おりゃあ!』と切ります。
またしても、切っているという感覚は全くないまま、びっくりするほどキレイに切れました。
『なんてこった!!』
得体の知れない凶器を手にしてしまった恐怖を感じる一方、ハサミが持つ底知れぬポテンシャルに心が踊ります。もっと強いものを切りたいという欲求は、抑えがたいほどに高まっています。目は血走り、絶対に切れなさそうなものを探します。
ふと、民家の南京錠に目がとまりました。
『あ、あれも切れるかもしれない…』
しかし、民家に侵入して南京錠を切っていたら、どう考えても泥棒です。住居侵入とか器物損壊とか窃盗未遂とか、やばそうな罪がたくさんあるはずです。
『南京錠ならウチにもあるぞ!?』
名案が浮かんだ発明家のように、大急ぎで家に帰ります。大きなハサミを持った中学生がダッシュしていたら、それは悪さをする前兆です。
家に帰ると、物置小屋にかけてあった南京錠を、ハサミで軽く挟みます。呼吸を整えて、ゆっくりと力を加えていきます。
ハリガネや木の枝とは違い、確かな感覚がありました。しかし、グンと力を入れると、南京錠はブツンと切れてしまいました。
『うおぉぉぉぉ!』
防犯の代名詞である南京錠がチョン切られたいま、このハサミに切れないものは無いという全能感に支配されます(南京錠を切ってしまったことで母親に怒られることになど、この時点では考えも及びません)。
『こんなハサミがあるんだったら、南京錠なんて意味ないじゃんか!』
南京錠への信頼が失墜した瞬間でした。ふと横を見ると、当時飼っていた愛犬(ビーグル犬)の小屋に目がとまりました。「ちょっとゴメンね」と言い、犬小屋の屋根とか床を切ってみます。犬は『!!』という状態でウロウロ歩き回りつつ、寂しそうな目で切られていく我が家を見つめています。あんまり切るとかわいそうなので、適当なところで切り上げます。
興奮冷めやらぬ私は、ハサミを持って友達の家に行き、一緒に色々なものを切りまくりました。友達もその切れ味に興奮し、捨てられた自転車をズタボロに切り刻んだり、野球ボールを切ってみたりして、破壊の喜びに酔いしれました。
そのハサミが今日、ボロボロにサビた状態で発見されました。ちょっと切ない気持ちになりましたが、もしも綺麗な状態で発見されていたら、また色々なものを切ってしまったはずなので、サビていて良かったです。

植木職人が使うようなハサミで、道のど真ん中にぽつんと置かれていました。
『おや??』と拾い上げ、ずっしりと重いハサミを両手で開閉してみます。すると、ハサミが自らの意志で動いているかのように、実に自然と動きます。これまで味わったことのない感覚です。
『こ、これは!』
思わず興奮し、何でもいいから切ってみたくなりました。
何か切るものはないかと探していたら、太めのハリガネが落ちていました。
おそるおそる切ってみると、切っているという感覚はまったくないのに、ハリガネがプツンと切れました。
『こ、これは!!』
興奮は一気に高まります。もっと切りごたえのあるものはないかと、ハサミを持ちながら上落合公園周辺をぐるぐると歩き回りました。
大きなハサミを持った中学生がきょろきょろしていたら、それは悪さをする前兆です。
ふと、木の枝に目がとまりました。親指くらいの太さのある枝です。カバンを置いてちょっと木によじ登り、木の枝をハサミで軽く挟みます。呼吸を整えて、『おりゃあ!』と切ります。
またしても、切っているという感覚は全くないまま、びっくりするほどキレイに切れました。
『なんてこった!!』
得体の知れない凶器を手にしてしまった恐怖を感じる一方、ハサミが持つ底知れぬポテンシャルに心が踊ります。もっと強いものを切りたいという欲求は、抑えがたいほどに高まっています。目は血走り、絶対に切れなさそうなものを探します。
ふと、民家の南京錠に目がとまりました。
『あ、あれも切れるかもしれない…』
しかし、民家に侵入して南京錠を切っていたら、どう考えても泥棒です。住居侵入とか器物損壊とか窃盗未遂とか、やばそうな罪がたくさんあるはずです。
『南京錠ならウチにもあるぞ!?』
名案が浮かんだ発明家のように、大急ぎで家に帰ります。大きなハサミを持った中学生がダッシュしていたら、それは悪さをする前兆です。
家に帰ると、物置小屋にかけてあった南京錠を、ハサミで軽く挟みます。呼吸を整えて、ゆっくりと力を加えていきます。
ハリガネや木の枝とは違い、確かな感覚がありました。しかし、グンと力を入れると、南京錠はブツンと切れてしまいました。
『うおぉぉぉぉ!』
防犯の代名詞である南京錠がチョン切られたいま、このハサミに切れないものは無いという全能感に支配されます(南京錠を切ってしまったことで母親に怒られることになど、この時点では考えも及びません)。
『こんなハサミがあるんだったら、南京錠なんて意味ないじゃんか!』
南京錠への信頼が失墜した瞬間でした。ふと横を見ると、当時飼っていた愛犬(ビーグル犬)の小屋に目がとまりました。「ちょっとゴメンね」と言い、犬小屋の屋根とか床を切ってみます。犬は『!!』という状態でウロウロ歩き回りつつ、寂しそうな目で切られていく我が家を見つめています。あんまり切るとかわいそうなので、適当なところで切り上げます。
興奮冷めやらぬ私は、ハサミを持って友達の家に行き、一緒に色々なものを切りまくりました。友達もその切れ味に興奮し、捨てられた自転車をズタボロに切り刻んだり、野球ボールを切ってみたりして、破壊の喜びに酔いしれました。
そのハサミが今日、ボロボロにサビた状態で発見されました。ちょっと切ない気持ちになりましたが、もしも綺麗な状態で発見されていたら、また色々なものを切ってしまったはずなので、サビていて良かったです。
