前前回のショパンコンクールの覇者のブルースさん。
私、来日公演はかかさず行ってます。
完売でした。
まずは曲目
- リゲティ:ピアノ練習曲集 第1巻 第4番「ファンファーレ」
- ベートーヴェン:ピアノソナタ 第14番「月光」嬰ハ短調 Op.27-2
- ショパン:ノクターン第7番 嬰ハ短調 Op.27-1
- ショパン:ノクターン第8番 変ニ長調 Op.27-2
- ラヴェル:鏡 第4曲 「道化師の朝の歌」 ニ短調
- ドビュッシー:夢
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」ハ長調 Op.53
- モンポウ:「月の光」によるグロッサ
- アルベニス:イベリア 第1巻 第2曲「港(エル・プエルト)」
- リスト:スペイン狂詩曲
[アンコール曲]
- ショパン:練習曲op.25-1「エオリアン・ハープ」
- シューベルト:楽興の時 第3番
- チャイコフスキー:「白鳥の湖」より4羽の白鳥たちの踊り
ブルースがショパンコンクールで協奏曲を弾いている動画をリアルタイム配信で見たとき「あっ、優勝はこの人だ!」と確信しました。反田恭平さんを応援していましたが協奏曲の2楽章の求心力がちょっと欠けてて「うーん・・」という感じでした。
ブルースのファイナルの協奏曲は霊感が降りてました。
結果発表を見てから「やっぱり、ブルースだと思ったんだよ」とかいう後出しじゃんけんみたいなパターンが嫌なので、ブルースの演奏を聴き終えてクラシック仲間らに「今年のショパンコンクールはブルースで決まり」と早速発信しました。
そして予想通り優勝!
その後、名門ドイツグラモフォンと契約してラモーを録音したり、最近ではチャイコの四季を入れたり、結構メジャーじゃないところで攻めてるなって感じのブルースが、今回のプロも1曲目、リゲティです。
この曲はとても面白かった。
基本主題というより基本伴奏のような音型の上にいろんな音が乗っかってました。
月光・・・ブルースは全編声をあらげることは絶対にしません。
平凡に聴こえそうな、極めて抑制された月光ですが、分かりやすく耳に刺さる表現ではなく、
その謙抑的な表現の中から胸に刺さる音楽が聴こえてきました。
1楽章。
本当に難しいと思います。
演奏効果のことなんてベートーヴェン、考えてません。
ただただ、ベートーヴェンが想いを寄せた女性への抑制された静かな想いが淡々と紡がれていきます。
2楽章。
思慕の情念を抑制された形で表現した1楽章に続いて2楽章はリズムがいいですね。
月光ではなくところどころ陽光が射してました。
3楽章は技巧的に難しい曲ですが、ブルースにかかれば一瞬で勝負ありです。
ショパンのノクターンは甘めの曲で私の好みではありませんが、ブルースは硬派に仕上げました。
そして鮮烈なラヴェル。
ブルースの演奏は、ある意味、女性的だと思います。
チャイコの四季を松田華音さんのCDをヘヴィロテしていた時期がありますが、ブルースの四季をCDをチェンジして聴いたとき
松田さんの演奏の方が男前でした。
ブルースの演奏は女性的な柔らかさを感じました。
どちらも素晴らしい演奏です。
後半はドビュッシーの夢で始まりました。
ファツィオリの硬度の高い音で紡がれるドビュッシーが選び抜いた音粒。
今日、一番ファツィオリらしい音を聴いた気がしました。
とても刺さりました。
走馬灯のように数々の夢のような断片が心を駆け巡りました。
涙出ました。
そのままベートーヴェンのワルトシュタイン。
私が一番最初に馴れ親しんだベートーヴェンのピアノソナタです。
私が小学生の頃、ホロヴィッツが23番「熱情」と21番の「ワルトシュタイン」をレコードの両面でリリースしました。
それをカセットテープにダビングしてラジカセで寝入りのときに毎日のように聴いていました。
1楽章は推進力に満ちた曲ですが、ここれもブルースは勢いにまかせて弾くことはしません。
印象的だったのは2楽章。
独白のような音楽。
ときに32番の2楽章のひそやかなつぶやきのような音楽すら聴こえてきました。
ベートーヴェンの後期ってピアノソナタと弦楽四重奏でゾーンに入るときがありますが、
中期にもその片鱗はやっぱりあるんですね。
今日の2楽章は、私とこの曲のおつきあいは小学生の頃からになりますが半世紀以上聴いてきたこの曲の初めての顔を見るようでした。
リストのスペイン狂詩曲はヴィルトオーゾ全開で会場をおおいに盛り上げますが、ここでも終曲と同時に聴衆が
ブラボーを叫んで立ち上がるという風ではないんです。
おそらくユジャ・ワンが弾いたらそうするし、そうなるでしょう。
ブルースは、そういうことしません。
だから悪いという意味ではなく、私はその抑制された音楽の中に美を感じました。
ファツィオリ。
1981年創業ですから後発も後発のイタリアのピアノメーカー。
後発とはいえショパンコンクールの公式ピアノの1台とされています。
ヤマハ!カワイ!という日本が誇る2大ブランドとスタンウェイ、そしてファツィオリです。
ファツィオリを弾くブルースが優勝したときのショパンコンクールのおりに3位になったガルシア・ガルシアもファツィオリを弾きます。
ブルースとガルシアの音は同じファツィオリでも全然違います。
ガルシアはときに暴力的なハンドリングをします。
鋭く響き渡る・・・そんな感じです。
私がこれまで聴いてきたファツィオリ弾き(アンジェラ・ヒューイット)の中ではガルシアが一番好きです。
ガルシアも再来週、池袋の東京芸術劇場で弾きます。
東京ってなんて贅沢な街なんでしょう。
年間70台しか製作されないピアノ界のフェラーリと称されるファツィオリをショパンコンクールの覇者と3位のピアニストで聴けるんです。
満員御礼!
素晴らしいコンサートでした。

