その日は、
葬儀の日時と、火葬という案がようやく確定したので、
式の当日前の全員の顔合わせは、形上は終了したことになりました。
それまでの間にやるべき事は、アンナがプランを組み立てていました。
火葬に関してはこちらの『自由』にしていいということになったので、
お墓を含めて、具体的なものを決めていかなければなりません。
翌日には、実際に墓地を訪れて、
3男にはどんな形の墓がいいのかを視察して歩きました。
家に帰ると、引き続きアンナが、
式で流す音楽とスライドショーの編集にかかっていました。
弔辞を述べてくれる人のリストも作っていました。
夜には 1女が到着する予定になっていて、
空港への迎えは、ナタリとパートナーのジルが車を出してくれました。
相変わらず記録的な寒さが続いていて、
半分以上の飛行機が欠航か遅延となっていた中、
何時間も遅れた娘の飛行機も、何とか到着しましたが、
家に帰りついたのは、夜中の2時をとっくに過ぎていました。
ついこの間、会ったばかりだったのに、
こんな形でまた会うことになった娘と、
ソファーベッドで横になりました。
旅の疲れ、興奮、感情の高揚…
説明のしようのない複雑な感じが絡み合って、
私と娘とは、夜中じゅう ずうっと手をつなぎあっていました。
翌日は、時差をぼやいているヒマがないほど
娘にはハードなスケジュールになりました。
墓地の土地を借りるという手続きのために、市役所に赴いたり、
斎場へ行って、ビデオと音楽のテストをしに行ったりと。
そんな中、昼過ぎにアンナが私に言ったのです。
「パパからメールきたんだけど、
ママが弔辞をのべたいと言ってるんで心配しているのよ」
アンナの両親は10年前に離婚していて、
彼女の父親、つまりナタリの元夫ジャックは、ハラ男の従兄弟という関係にありました。
私がハラ男と別離した時に、ナタリは既に離婚していたのですが、
私が、彼女が経験したのと同じ親族にコテンパンにやられていたのを知ると、
俄然奮起して、あらゆる面で私に手を貸してくれたのでした。
しかし、後からそれを知ったハラ男は、
私の味方につくすべての人を敵視して、
とりわけ、ナタリとジャネットに対しては恨み以外の何の感情も抱かないほど、
憎しみに明け暮れていたのです。
D村警察で騒ぎになったのは、そんな背景があったのです。
「こんな時にママが弔辞をのべるなんて言ったら、
ハラ男が何をしでかすかわからないでしょう。
パパもそれを心配しているのよ」
その後、ジャックは直接ハラ男の家に行って交渉したり、
アンナがナタリと話したりして、
何とか式が乱れない解決方法を探ったようでしたが、
何の進展もみられないままで、
午後になって 私はナタリからのメッセージを受け取りました。
ハラ男からこんなメッセージがきました。
私はもう、どうしたらいいかわかりません。
『 お前は今まで他人の家の問題に首を突っ込んで、
めちゃくちゃにしてきた。
余計なお世話だ。
それだけでも許せないが、挙句の果てに
僕の息子はこんな不幸なことになった。
すべてお前たちのせいだ。
・・・・・・・略・・・・・・・
その上大事な息子の葬式に
そんな奴らを来させるわけにはいかない。
断固拒否する。
それでも万が一来るというのなら、覚悟しろ。
殺してやる。・・・・』