呑気すぎて、笑われるかもしれません。
けれどその時まで、
私は3男が手ぶらで家を出て行っていたとは本当に思ってもいなかったのです。
何も持たずに出る。
足がつかないようにする。
身元がばれないようにする、、
- そこまで貴方は決心して出ていったの?
- まさか違うよね
- 確信犯じゃないよね…
どうしたものか。
焦って家の中をウロウロと歩きまわっても
何をすべきなのか、
頭の整理がつきませんでした。
ただし、警察からは依然 何の音沙汰もありませんから、
何かしら自分から確認作業をするしかないのです。
疑わしきものを私自身が当たって、
ひとつひとつリストから消去するだけだと思いました。
すでに前日には、
病院の救急には電話を入れていて、
該当しそうな患者のケースはなしという確認は取れていました。
そして次の 『疑わしきもの』ものとは、、、
D村にある あの橋でした。
その村は、街とはまた別の警察が所轄していました。
そこに住んでいた頃には、離婚がらみで、
元夫のハラ男が幾度となく私を訴えたために、「足繁く」通った経緯があって、
あまりによく知り慣れた場所なのでした。
そんな理由もあって、
その警察の直通の電話番号もいまだに持っていました。
私は躊躇することなく その番号を呼びました。
早くやることをやって、
その項目をリストから消去したい一心でした。
「もう街で捜索願は出したんですが、
万が一と思って電話しています。
そちらで、事件的なことがなかったかと・・・」
電話口の男性は 少々お待ち下さいと言って、
通話が待ち受けに代わりました。
暫く待つと、同じ男性がまた出てきました。
「また少し待ってくださいね。
切らないでくださいね。」
ただの照会電話の対応にしては、
物腰が丁寧すぎるように思いました。
「切らないでお待ちくださいね。」
何度かそのやり取りが続いたあとに、
やっと別の男性にかわりました。
「奥さんは、こちらへ来られますか?」
「えっ? 何のために? なにかやっぱり心当たりのことがあったんですか?」
「それは言えませんが、来られますか?」
「えっと・・・・・ ××時ぐらいなら・・・」
「じゃあ、来るときに、同伴してくれる人はいますか?」
えっ? なぜ? なんか変
どうなっちゃってるの???
ただその男性は更に続けたのです。
「その息子さんですが、髪の毛の色は?」
その瞬間、疑心が確信に変わりました。
3男は、髪をパープルに染めていたのです。