こんにちは、原田高志です。脳卒中リハビリテーション看護認定看護師として20年、看護学生や新人看護師の指導経験から、今回は【急性静脈血栓症肺塞栓症合併】について、実習やケア、観察・症状・治療・注意点をわかりやすく解説します。

看護学生のための急性静脈血栓症・肺塞栓症ケア実習ガイド

―観察ポイント・主な症状・治療・注意点をやさしく解説―

【ここで紹介する事例は学習テーマ用の架空事例です】

事例:実習で担当した71歳女性・長期安静後に急性発症

あなたが実習で担当したSさん(71歳女性)は、下肢骨折で3週間寝たきり生活をしていました。突然「片脚が強く腫れて痛い」と訴え、直後に急な胸痛と息切れ、チアノーゼで緊急搬送。検査で下肢深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)の合併と診断され、集中治療が始まりました。本人も家族も「なぜこんなことに…」と大きな不安を抱えていました。

急性静脈血栓症・肺塞栓症合併とは?

看護学生にも分かる基礎知識

  • **急性静脈血栓症(DVT)**は、主に脚の深部静脈に血栓(血のかたまり)ができる疾患です。

  • 血栓が剥がれ**肺の血管に詰まると肺塞栓症(PE)**となり、一気に重症化・命に関わるリスクがあります。

  • 長期安静・手術後・妊娠・がん・肥満・脱水などの状態で起こりやすいです。

主な症状と観察ポイント

  • DVT:片脚の腫れ・痛み・発赤・熱感

  • PE:突然の息切れ、呼吸困難、胸痛、頻脈、チアノーゼ、失神

  • バイタル:脈拍や呼吸数の上昇、低酸素血症

  • 重症例ではショック状態、意識障害、血圧低下

観察記録のコツ

  • 足の左右差やむくみ、疼痛の部位・程度を観察・記録

  • 呼吸状態・SpO₂・顔色・意識レベルの日々の変化も

  • 「ベッドからの移動時」や「トイレ後」など急性発症場面に注意を

治療とケア、学生実習での場面と注意点

治療の基本

  • 抗凝固療法(ヘパリン・ワルファリン・DOACなど):血栓の進行・再発予防

  • 重症例では血栓溶解療法や外科的血栓除去術

  • 急性期は絶対安静~安静度制限の指示に従うことが重要

  • 下大静脈フィルターなどの挿入が行われる場合も

看護学生が押さえるべきケア

  • 下肢の観察と保護:マッサージは厳禁

  • 呼吸管理:急変時は即報告、バイタルサイン・SpO₂観察

  • 安静度遵守・転倒予防:ADLに応じた介助

  • 服薬管理と副作用チェック:抗凝固薬の出血リスクを常に意識

  • 精神的ケア:不安・恐怖に寄り添い、丁寧な説明や励まし

  • 感染予防・褥瘡予防:長期安静に伴う合併症を二次的に予防

実習で学生が遭遇しやすい課題・乗り越えのポイント

  • 「下肢の観察がどこまで必要?」
    → 温度・色・ふくらみ・脈・疼痛の部位・程度(定量的記録)が大事です。

  • 「抗凝固薬で出血しやすい?どこに注意すればいい?」
    → 皮下出血、鼻出血、口腔内・尿・便への出血などを観察、すぐ報告。

  • 「患者さんが“動くのが怖い”と訴えたとき」
    → できること、できないことを一緒に確認し、無理をしない範囲での動作・セルフケア支援

  • 「急な息切れや失神があった場合」
    → すぐにチームや指導者に報告。バイタル・SpO₂・顔色チェック、主治医指示を確認

学生の声:「初めて“片足の腫れ”を発見し記録した時、指導者に“よく見ていたね”と褒めてもらえました。その直後の急変対応も、事前の観察・記録が大切だと実感しました。」

Q&A よくある質問

Q1. 安静や術後で“DVT”を疑うのはどんなとき?

  • 片側の足だけが赤く、腫れて痛みが強くなったら要警戒。一見ちょっとした違和感の訴えからも念入りに観察を。

Q2. 肺塞栓症発症時、一番に記録・報告すべき症状は?

  • 息切れ、チアノーゼ、胸痛、意識レベル変化、呼吸数やSpO₂低下―時間・状況を客観的に記録し、早急に報告。

Q3. 出血リスクの高い抗凝固療法中の観察ポイントは?

  • 歯肉出血・鼻血・皮下出血(あざ)・血尿・血便・頭痛や腹痛の初発も注意サイン。

Q4. 予防ケアは実習でどうサポートできる?

  • 指導があれば徐々に足の運動や深呼吸、生活での脱水予防、体位変換・弾性ストッキングの正しい着用を支援。

学生実習で成長するヒント

  • 「昨日とどこが違う?」を丁寧にチェック、早期発見・記録でチームに大きく貢献!

  • 困った時、不安・迷いはすぐに指導者・チームに相談

  • 患者さん・家族の不安や質問にも耳をかたむけ、分かりやすく伝える力を養おう

もっと知りたい!ワンランク上の看護を目指すあなたへ

  • 最新の診療ガイドラインは**日本循環器学会「静脈血栓塞栓症診療ガイドライン」**や「日本血栓止血学会」、ナース専科・**看護roo!**などを定期的に確認しましょう。

  • DVT・PEの病態や予防・再発防止ケア、新しい抗凝固薬についても積極的に学ぼう。

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【参考・出典】

  • 日本循環器学会「静脈血栓塞栓症診療ガイドライン」

  • 日本血栓止血学会「肺塞栓症・深部静脈血栓症ガイドライン」

  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「肺塞栓症|静脈血栓塞栓症」

  • ナース専科「VTE(静脈血栓塞栓症)の看護」

  • 看護roo!「急性肺塞栓症の看護とクリニカルパス」

  • J-Depo「深部静脈血栓症・肺塞栓症患者の看護ケア計画」

  1. https://www.kango-roo.com/learning/8249/
  2. https://www.kango-roo.com/learning/7237/
  3. https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/1869/
  4. https://knowledge.nurse-senka.jp/225629/
  5. https://ameblo.jp/stroke-rehabilitation-ns/entry-12916177391.html
  6. https://ameblo.jp/stroke-rehabilitation-ns/entry-12913352832.html
  7. https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/1039/
  8. https://knowledge.nurse-senka.jp/500442
  9. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrcsns/25/1/25_250107/_pdf/-char/ja
  10. https://www.kango-roo.com/learning/3184/
  11. https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/JCS2017_ito_h.pdf
  12. https://www.kan-naro.jp/topics/nursing-training/000075
  13. https://www.youtube.com/watch?v=OWGS4DCpwQs
  14. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/05-%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%BA%E5%A1%9E%E6%A0%93%E7%97%87-pe/%E8%82%BA%E5%A1%9E%E6%A0%93%E7%97%87-pe
  15. http://www.nara-pho.jp/disclosure/pdf/B001_02_iryouannzennkannri.pdf
  16. http://www.njc-web.co.jp/pickup/faq/index.php
  17. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Tamura.pdf
  18. https://raptorproject.jp/admin/wp-content/uploads/2021/05/20210814_PE.pdf
  19. https://www.tobu.saiseikai.or.jp/watchman/
  20. https://kango-oshigoto.jp/media/article/2270/