こんにちは、原田高志です。脳卒中リハビリテーション看護認定看護師として20年、学生指導の経験から、今回は【慢性静脈不全症】について、看護学生1年生にも分かりやすく、実習や看護ケア・観察・症状・治療・注意点をやさしく解説します。
看護学生のための慢性静脈不全症ケア実習ガイド
― 観察ポイント・主な症状・治療・注意点をやさしく解説 ―
【ここで紹介する事例は学習テーマ用の架空事例です】
事例:実習で担当した61歳女性・立ち仕事歴あり
あなたが実習で担当したIさん(61歳女性)は、立ち仕事を長年続けており、数年前から「夕方になると足が重い」「むくみがとれない」「最近、くるぶし付近がかゆくて色も変わってきた」と悩んでいます。下肢静脈エコー検査で「慢性静脈不全症」と診断され、生活指導と弾性ストッキングが処方されました。家族や本人も「どのように日常生活を工夫すればいいのか」と不安を感じています。
慢性静脈不全症とは? 看護学生向けやさしい基礎知識
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**慢性静脈不全症(CVI:Chronic Venous Insufficiency)**は、足の静脈にある「弁」に障害が起き、血液がうまく心臓に戻らず、足の静脈にたまる状態です。
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壁や弁の異常のため、「下肢のむくみ・皮膚色の変化・かゆみ・重だるさ・潰瘍」などが現れます。
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立ち仕事や肥満、加齢、妊娠、過去の深部静脈血栓症などがリスクとして挙げられます。
主な症状と観察ポイント
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下肢の重だるさ・つりやすさ(こむら返り)
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むくみ(浮腫):特に夕方から夜に悪化
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皮膚色の変化:くるぶしやふくらはぎに色素沈着(茶色っぽい)、湿疹、かゆみ
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皮膚潰瘍:悪化すると創傷(足のくるぶしや内側)として現れる
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静脈瘤:足に浮き上がる血管が目立つ場合も多い
観察ポイント
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むくみの程度、範囲や日内変動
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皮膚の色・熱感・発疹・傷の有無
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「じっと立った後」や「長時間座った後」の症状変化
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靴下や靴のあと、ADL(歩行・階段昇降)時の様子
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患者の生活背景(職業・活動パターン・食習慣など)
たとえば、患者さんが「夕方になると足首のまわりがかゆくて、靴下のあとがくっきり残る」と言えば、慢性静脈不全症のサインを見逃さないことが大切です。
治療の基本と実習での看護ケア
治療の柱
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保存的治療(生活指導・圧迫療法)
・弾性ストッキング着用(正しい圧とサイズ選び、毎日の手入れ・履き方指導)
・安静・足の挙上・適度な運動(歩行や屈伸運動) -
薬物療法
・浮腫改善や皮膚症状緩和のための内服・外用薬 -
外科的治療
・症例に応じ静脈瘤切除や血管内治療(レーザー、高周波治療など)が行われる
ケア・日常生活での注意点
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体重管理(肥満の改善はリスク低減につながる)
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長時間の立位・座位を避ける(こまめな体位変換)
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就寝時・休憩時に足を心臓より高くして休む
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皮膚の清潔保持・保湿ケア:乾燥・掻破を防ぐ、ひっかき傷や潰瘍からの感染にも注意
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外用薬・保湿剤の正しい使用
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圧迫療法時のトラブル早期発見(しびれ、痛み、発赤、皮膚潰瘍などはすぐに医療者へ報告)
たとえ話
「足の静脈は、重力に逆らって血液を戻す“ポンプ”のような働き。ポンプの部品(弁)が壊れると、水がだんだんたまって下に流れ出てしまう……そんなイメージです。」
実習でよくある悩み・学生の気づき
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「むくみや色の変化が分かりにくい」
→患者さんの“昨日・今日の違い”を毎日観察・記録する -
「弾性ストッキングの着用と皮膚ケアの両立に悩む」
→着脱時は皮膚状態を必ずチェック、“かゆみ・赤み”はすぐ相談 -
「患者さんが“めんどうでサボってしまう”」
→履く工夫・できている工夫を認め、続けられるコツを一緒に探す
学生の声:「皮膚にうっすら茶色いしみができているのを見つけ、毎日観察することの大切さが分かりました。患者さんには“今日はしっかり足を高くして休めましたね”と声かけし、励ましています。」
Q&A よくある質問
Q1. なぜむくみや色素沈着が起きるの?
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静脈の流れが悪くなり、血液や水分が皮下にたまりやすくなるためです。色素沈着は赤血球成分が皮下に流れ出すことで起こります。
Q2. 弾性ストッキングはどのタイミングで履く?
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起床後すぐ・浮腫が少ない時間帯に着用し、「眠る前や入浴時は脱ぐ」「着け方・サイズ管理にも注意」と伝えましょう。
Q3. 実習で押さえる観察記録・声かけのコツは?
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むくみや皮膚の変化、痛み・かゆみなど「小さな変化」を必ず観察・記録
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毎日記録することで、患者さん自身も変化に気付けるようにサポート
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体調の良い日・悪い日のパターンを一緒に振り返り、継続意欲を引き出す
Q4. 生活指導やケアで迷ったらどうしたら?
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患者さんや家族、指導者・先輩に相談し、医師にも早めに確認
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自分一人で悩まず、チームや多職種連携を大切に
実習を通じて成長するヒント
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毎日の小さな観察・ケアの積み重ねが、患者さんのQOL向上に直結
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継続的なアプローチと早期発見・記録・報告が「あなたの看護力」を高める土台に
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困った時は相談! 無理せず一歩ずつ学びへつなげよう
もっと知りたい!ワンランク上の看護を目指すあなたへ
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日本静脈学会「静脈疾患診療ガイドライン」
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ナース専科・看護roo!・厚生労働省などの公式医療情報サイト
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最新の弾性ストッキング、皮膚トラブル予防、多職種ケア・地域連携例をこまめにチェック!
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【参考・出典】
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ナース専科「慢性静脈不全(CVI)の看護計画」
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MSDマニュアル プロフェッショナル版「慢性静脈不全」
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日本静脈学会 静脈疾患診療ガイドライン
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看護roo!「慢性静脈不全の概要」
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看護roo!「慢性静脈不全患者への看護」
(他、日本血管外科学会・厚生労働省・看護専門誌・公式ガイドライン等も適宜ご参照ください)