公共バスの 初乗り
目指す民族博物館は街からバスで30分ほどの距離にある。
知らない土地でのバスの利用は いつも緊張する。
前から乗るのか後ろから乗るのか、料金はいくら? 払うのは乗るとき、それとも降りるとき? お釣りは貰えるの、それともピッタリの額でないとダメ? etc.
幸い10時ごろのバス・ターミナルは空いていて(ひょっとしたら この街にはラッシュアワーなんてない?)、乗車するものはほんの数名。だから車掌さんに行先と料金を訪ねてから 料金を用意しても 誰もイラついたりしないので助かった。
何もかもアバウト!
行き先を告げたので、降りるときに 車掌さんは親切にも「この坂道を左にのぼっていって、右に曲がりなさい」と教えてくれた。
その言葉に従って左に進んで右に曲がったのだけど、その先は広々とした道が広がるだけ。
「どこにもMuseumらしき建物は見えないゾ。」
尋ねようにも 日曜日だというのに人影はない。道路標識もない。
しばらく行くと、左官屋さんたち3人が、家の外壁の修理をしていたので 訪ねてみた。
「この道をまっすぐ行って、二つ目の道を右へ曲がるんだよ」と 3人は口々に言う。
その通り進んだら 畑にぶつかった。
途中、サーッカーをしている3人の少年たちと そのコーチらしき人を見かけたが、ゲームを邪魔してはいけないと思うと、声をかけるのがはばかられた。
噂に聞く通り、アイスランドの人たちはとてもフレンドリーで親切なのは確かだった。
来るとき、Iceland Air に乗って、手荷物を棚に上げようとした瞬間、あちこちから助けの手が伸びてきたのには驚いた。乗務員さんたちも、ただの営業用のスマイルではなく、みんなすこぶる上機嫌で愛想がよかったのが印象的だった。
「だけど----だけど、どうも彼らは、おおらかというよりアバウトすぎやしないか? だって、どの道順の説明もテキトーだし、それにさっきのバスだって、450クローネの運賃に500クローネを出したんだけど お釣りはなかったし----」
などど 自分の方向音痴は棚に上げて ブツブツ愚痴っていたら、小高い見晴らしのいい場所に行き着いた。なんと、そこから目的の博物館らしき建物が、そんなに遠くない前方に見えたのだで ひと安心。
広い敷地にまばらな観光客 民族衣装で迎えてくれた受付の男女
人もまばらな広い敷地に足を踏み入れて、受付に向かった。 カウンターには民族衣装を着た男女が にこやかに迎えてくれた。この人たちもすこぶる愛想が良かった。
私の姿を一目見たおじさんは、「60歳以上はフリーだよ」と言う。こんなに客が少なくて「無料」だなんて----。少々申し訳ない思いだったが、遠慮なくお言葉に従う。
敷地にはいろいろな時代の建築物が あちこちに広がっている。最初に足を運んだのが、9C.の移民初期の時代と思われる家だ。
この島は木が少ないため、伝統的な家は 土や石、草といった入手可能な材料で作られている。可愛くてなかなか暖かそうだ。内部は見ることができなかったが、今の日本の間取りでいえばIDKといったところかナ。
下の写真はぐっと下って 20C.前後の家屋かナ。
どの家も天井が低く、部屋も狭い。かつて「うさぎ小屋」と呼ばれた日本の家屋といい勝負。
だが、部屋数は多く、家族の一人一人が適当な空間を所有していたことが伺える。家具も部屋の装飾も、それぞれに工夫されていて快適そうだ。屋内で過ごすことの多い、長い冬の期間を、家族が片寄せ合って過ごしていた様子がしのばれる。
左上の写真は、まるで地下道のようだが、一階なのである。居間と台所の間をつなぐ 廊下のような空間は このように暗いので、明かりがなければ躓きそうだ。それに、こんなに大きさが不揃いの石で凸凹の床は、かなり古い時代のものであることを伺わせる。
居間に戻って、小さな階段を上がると、そこには斜めに傾いた 低い天井があって、二階というよりアティック(屋根裏部屋)みたいだった。
誰もいないと思っていたのに 民族衣装を着た若い女性が座っていたので、思わず「ヒヤー」と声を上げてしまった。
彼女も来館者が少ないので退屈していたのではかなったかナ。人の足音が聞こえたので、「急いで所定の位置に着いた」という感じだった。
話してみれば、夏の間だけの学生アルバイトとのことだった。写真を撮らせてもらったあと、「ありがとう」といって次の建物に向かったら、そこは教会であった。
ご覧のように 素朴で小さな教会だ。16C.頃のヨーロッパの都市住民の間ではプロテスタントが強力であった。宗主国のデンマークより15年遅れて、アイスランドもプロテスタントを受けいれたという。
週に一回、この小さな教会で、村人たちが集まって敬虔な祈りをささげると同時に、社交と互いの安否の確認を行っていたことだろう、としばし思いを馳せる。
この施設の周囲には、牧場が広がっているが、この風景も民族博物館に豊な彩を添えている。なんといっても、開拓の初期の時代から人間と生活を共にしてきた馬と羊なのだから。
乗馬はアイスランドの国民的スポーツと言われている。あちこちで見かける馬は「アイスランディック・ホース」という種で、バイキング時代を色濃く残しているのだそうだ。
3頭とも同じ方向に向かって立っているが、これは強風で体力が消耗するのを防ぐためだとか。ならば、先頭の馬と、時々、位置を交代しているのであろうか? それとも先頭に立つ馬は体力のある馬と、暗黙の裡に了解し合っているのであろうか?
そういえば、これは 先の冬季オリンピックのスピードスケートで優勝した3人の日本女子選手が、空気の抵抗を避けるためにとったポーズとそっくりだ。----そんなことを思い出していると、なんだか3頭が生存に必要な知識を熟知している とても思慮深い馬に見えてきた。(ホントにそうなんだと思う)
さて、もう一種、アイスランダ―にとって大切な仲間が羊だ。その数は人間よりも多くて、40万頭だという。バイキングが連れてきて以降、島だけで繁殖が続いた結果、飼育羊としては世界最古の純血種となったということだ。彼らは人間に必要な食用や衣類ともなって、常にアイスランド人の命を支えてきたのだ。
何だかこの島は「世界で一番***だ」というのが多い。そういえばレイキャビックは世界最北の首都だし----、それに、明日の予定は「世界最大の野外温泉ブルー・ラグーン」行きだ。












