イン・ガーディア:おじさんたちによる大包囲戦の再現

 

「歴史装束に身を包んだ、騎士団軍隊の華麗なパレードが 聖エルモ砦で再現される!」

 

ガイドブックによれば、100人からの現役警察官による、1565年のオスマントルコとの戦いの様子が、「忠実に再現される」とのことであった。

 

開催の場所は聖エルモ砦。写真の先端部分。

 

 

(オスマントルコ帝国の防御のために、わずか6ヶ月で築かれた星形の砦。トルコ側からの1ヶ月に及ぶ猛攻撃により、このエルモ砦は 敵味方の死体が累々と重なる凄惨極まる戦いの場となったという。)

 

 

この島に来る前から、塩野七生さんの一連の本で頭をいっぱいにしてきた私は、頭の中に渦巻くイメージを実際の人間が再現して見せてくれるということに興奮し、大きく期待が膨らんだ。

 

当日は、1時間も前にチケットを買って(一番乗りだった)、ワクワクして開催を待った。

 

      

槍を持った若者は、ずーっと前かがみの姿勢。 この鉄砲隊の人たちがカモメを打ち落とす張本人だったかも?

 

ところが、ところがだ、「100人もの現役警察官によるパフォーマンス」というのは、どう見てもウソだ!

 

演じるのは、3、40人くらいの町内会のおじさん、いや、おじいさんたちだった。

 

太鼓隊は でっぷりとお腹を突き出した70歳前後(?)の男性たち。 槍を担ぐのは若者だったが、彼らは逆に、パソコンやスマートフォンに慣れ親しんだ世代独特の前かがみの猫背だった。

 

「背筋を伸ばして、顎を引いて----」って誰も教えなかったのかな?

 

行進はチョコチョコと小股で、足並みがそろわない。そろわないどころか、左右の足が逆になっている人もいた!

 

これが一躍、その勇壮な戦いぶりで世界を驚かせた聖ヨハネ騎士団の再演!?

町内会の余興だったら ともかく、これで€7とはちょっと高くないか?

 

----などなど、愚痴りながら見ていたのだけど、でも、しかし----、彼らの緊張感のなさは、そのまま現実世界の「平和」を反映しているのだと思うことで、自分の中の失望を納得させた。

 

マルタのおじさんたち、楽しそうだったじゃないか。明るい太陽の下で、みんなに見られながら、大好きな騎士のパフォーマンスを披露できて----。(ひょっとして、お小遣いもいただけたかも?)

 

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実際の戦いでは、このエルモ砦の一角は、砲撃によって破壊されたという。その片隅に現在もある小さな礼拝堂では、敗れた戦士や司祭が処刑され血が流されたと、プレートに解説があった。

 

騎士の処刑は凄惨を極め、生きたまま皮を剥ぎ取られたうえ、丸太に括り付けられ、海に放り込まれたというではないか。

 

(家畜の屠殺に慣れている牧畜民族は、人間に対してもこのような殺戮方法を考え出すんだな。)

 

  

    そろってないよ                  姿勢が悪いよ!

 

聖エルモ砦を去る前に、小さな礼拝堂で、戦いの犠牲者に祈りを捧げた。