#405『未だに不思議なこと』
僕が中学生の時、こんな体験をした。
夏休み、家族で祖父の家へ遊びに行った。
この場所はかなり田舎の地域で、
遊ぶ所もなく僕ははっきりいって退屈だった。
それでも夜になれば家から持ってきた花火をする事になっていて、
妹と一緒に近くの河原で花火を楽しんだ。
1時間程経ち、そろそろ帰ろうかという時、
祖父から持たされていた懐中電灯が急に消えた。
何度かスイッチを入れてみたが、どうやっても点かない。
「こんな暗い中で動くのは危ないな」と思ったが、
妹が「暗い!怖い!早く帰りたい!」と騒ぐものだから、
暗闇の中、とにかく慎重に祖父の家へと戻る事にした。
その帰り道。あたりは本当に暗かった。
しばらく歩いていると50メートル程先に街灯があり、
その街灯の下に人影が見えた。
その人影は僕たちに向かって、手を振っていた。
「じいちゃんが迎えに来てくれたのかな」と僕は思った。
「おーい、早くこーい。早くこーい」
祖父の声だった。
やっぱり迎えに来てくれたのだと、僕は安心しかけたのだが、
ふと違和感を感じた。
「なぜ僕達の事が見えたのだろう」
こちらからは街灯の明かりで人影を見る事が出来た。
しかし僕達のそばに明かりなどない。
普通に考えれば、向こうから僕達の姿が見えるはずがない。
「早くこーい」
そう呼ぶ声は、確かに祖父のものだったが、
僕は得体の知れない不気味さを感じ、
かなりの遠回りをしてその街灯を通らない道で祖父の家へ帰った。
祖父は家に居た。
すぐさまこの体験を話したが、
「じいちゃんを怖がらせようたってそうはいかないよ」
と信じてもらえなかった。
最近、高校生になった妹にこの話をした。
覚えていないという。
あれは僕の夢だったのだろうか…いやそんなはずはない。
確かに僕は「手を振るモノ」を見た。
アイツは一体何だったのか、本当に不思議に思う。
放送作家 写六家
ウノプロダクション株式会社
放送作家集団ストレンジャー
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放送作家育成プロジェクト2008~2015(事務所&全実践)
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