#11 『上村愛子 最後の五輪』
始まりは長野から。
地元、白馬村で育った彼女は初の五輪でいきなり7位入賞を果たす。
それからソルトレイク(6位)、トリノ(5位)、バンクーバー(4位)と
着実に成績を上げながらメダルには手が届かない。
そうして迎えた今回のソチの舞台。
ギリギリ残った決勝では第一走者。これがオリンピック最後の滑り。
スタート!
この一本に全てを懸ける意気込みが伝わる。
準々決勝、準決勝とは明らかに違う。
ターンが速い、着地もブレない、
ジャンプもこの日の誰よりも高いバックフリップを決めてゴール。
タイムもこの日のトップ!
滑り終えた瞬間、見ているこっちまでジワッとくるものがあった。
彼女のこの一本に懸ける思いがはっきりと伝わる滑りだったからだ。
しかし、結果としては4位に終わってしまった。
インタビューでは開口一番、
「聞きにくいかもしれませんが、真っ直ぐ聞いて下さい」と。
長野で見せた「滑ることが楽しくてしょうがない」
というような純真な笑顔ではなくて、
モーグルを突き詰めた努力の結果を
この一瞬に全て出し切れた満足感に溢れる笑顔に変わっている。
これまで5度のオリンピックは、選手をここまで成長させる。
また、「特に決勝は渾身の滑りでしたね」との問いかけに、
「それが皆さんにもし伝わるような滑りが出来ていたとしたら、
今までにできなかったことなので、それがすごく嬉しいことです」と。
いつもと変わらぬ上村スマイルで応えていた。
この16年の間、一人の競技者の人生を日本中が見つめてきた。
五輪のモーグルにはいつも上村がいた。
たった4年に一度かもしれないが、皆が彼女の成長した姿に声援を送った。
今日がその集大成。
最後もメダルにはあと一歩届かなかったけれど、
彼女が5回、オリンピックのメダルに挑戦し続けたことは忘れない。
日本中に愛されながら、
オリンピックのメダルにだけは愛されなかったひとりの女子モーグル選手。
上村愛子、最後の五輪が幕を閉じた。
放送作家 広田山
ウノプロダクション株式会社
放送作家集団ストレンジャー
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放送作家育成プロジェクト2008~2015(事務所&全実践)
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