#10 『五つ子』 | 放送作家集団『ストレンジャー』ブログ by ウノプロダクション

#10 『五つ子』

これは、全くウソの話なのですが・・・。

「五つ子ちゃん」の長男坊として生まれた私は、
幼い頃より、特別な自尊心を首にぶら下げ闊歩していた。
ちょいと道を行けば、
「五つ子ちゃんよ」「双子の倍以上よ」と、町の噂のど真ん中。
下の世代の人間達は、羨望の眼差しで私を見つめ、
「いつしか大きくなったら、ボクも五つ子ちゃんになりたいです」
と、無茶な望みを打ち明ける。
私が調子に乗るのも無理はなかった。
・・・しかし、良い時は、そう長く続くものではなく。

ある年。
「遠くの町から、7つ子ちゃんが転校して来た」
私は五つ子ちゃん。明らかに、2ポイント差で負けていた。
失脚。絶対的「五つ子ちゃん」の巨塔が、音を立てて崩れ去っていく瞬間。
「双子」「三つ子」を鼻で笑っていた自分が、急に恥しく、愚かに思えた。
これからは一生、でしゃばらず、
サボテンの様にひっそりと生きていく事にしよう。
さよなら・・・、私の青春。

そして、翌年・・・。
一輪車で日本一周の旅に出た少年が、
アドバルーンに乗って町に帰ってきた
一体何のコトやら分からないが、とにかく町は大騒ぎだ。
ただ・・・、さすがにコレは駄目だと思った。
口出しせずにはいられなかったのだ。
ごったがえす人の群れを掻き分け、私は、「少年アドバルーン」と対峙した。
キョトンとした、周囲の人間たち。
「やい、少年アドバルーン」
私は言ってやった。
「人の気を引く為とはいえ、ウソは付かないで下さい」

・・・・ん?

放送作家 半袖五組


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