アベノミクスは進化する

 

アベノミクスが最盛期だった当時、それに対する批判的な内容は多かった。

しかし結果としては株価も上昇し、失業率も下がり、目的は達成したように思う。

本書はそんなアベノミクス批判に対して真っ向から反論していく。

 

さっそくだが、本書の内容を理解するにはかなりの経済学的な知識を要求されるので知識が浅い人間ではかなり理解が難しいだろう。私も大半は浅いレベルでしか理解できずに読了した。

例えばNAIRU型フィリップスカーブなど、当たり前に説明がなく専門用語が文章に表れる。この時点でついていけない読者は多いと思う。

 

一方で本書の主張はシンプルで、各章の1P目でどういった内容に対して反論しているのかが明確に記載されている。

そういった意味では各章の独立性が高いので、「これを理解するには前の章を読み返さないといけない」などはない。

 

本書の意義としては世間に流布されている根拠の浅い主張を一掃するという意味では価値があるものだと思うが、一方で全体を通して感じる読みづらさがこの本の価値を落としてしまっているように思えてならない。

三流新書のような読者を煽って売るような低俗な内容にしろとまでは言わないが、もう少しアカデミック臭さは消してもよかったのかもしれない。

 

評価:★★★★☆

 

 

以前、日経新聞は信用できるか?という本を紹介したが、今回はそれを踏まえての日経新聞の読み方を紹介する内容である。

まあ前回と同じく非常に批判的な内容なのだが。

 

 

ただ、読んでみると批判的にならざるを得ない理由がよくわかるので、「日経新聞でも読んでおくか」という「でも・しか読者」のみなさんにこそ読んでいただきたい一冊ではある。

ただし、本書が発売されたのは2010年なので話題は相当に古い。しかしながらその批判内容は今でも通用するであろう。

 

例えば日本のマスコミが大好きな生産性の指標であるが、本書では衝撃的な事実が書かれている。

労働生産性が高まるときというのは、不景気なときである。何故か?

まず労働生産性は実質GDP/総労働時間で計算される。ここで労働生産性が上がるときは実質GDPが増えるときだと思いがちだが、実際は逆だ。つまり、総労働時間が減るときである。

では総労働時間が減るときとはどういうときか? それは不景気で人が切られ、正社員も時短を求められるようなときだ。そうすると分母が減るので数値は上昇する。

逆に好景気なときは人をどんどん雇用し、残業も厭わないので総労働時間は増える。つまり、労働生産性は減少する。

なので、労働生産性という値はまったく当てにならない微妙なパラメータなのである。

 

にも関わらず何故か日経新聞はこの指標が大好きである。

おそらく、意味もわからずに「数字は大きいほうがいい」程度の認識で使っているのであろう。

 

他にも当時の状況から見ても疑問符が大いにつく報道内容ばかりで、それが今でも続いているのかと思うと本当にこの新聞を信用していいのだろうか、という気がしてくる。

それでも「日経新聞しかないから」と仕方なく読んでいる読者が大半なのであろう。

毎月数千円も払って・・・そう思うとどこか哀れさを感じずにはいられない。

 

評価:★★★★☆

 

 

増補・日本経済新聞は信用できるか

東谷 暁

 

国内で経済関係の新聞を読もうと思ったら、日本経済新聞しか選択肢はない。残念ながら。

この著書では「でも・しか新聞」と言われ「日経でも読むか」「日経しか読むものがない」というのが読者の本音であるというが、これは多くの人の偽らざる感想だろう。

しかしそんな唯一の選択肢である日経新聞が信用できないとしたら? 本書では日経新聞が読むに値する新聞なのかを検証していく。

 

まず、本書が書かれたのが2004年であり、これはその増補版のため解説の始まりはバブル崩壊前後から始まる。また、最近の話題としてはリーマンショックまでが限界なのであまり最近の話題を期待すると肩透かしを食うだろう。

バブル前、今では想像できないかもしれないが日本式経営こそが世界最先端で、それこそが最高であった。日経新聞も当然、その流れに乗って日本式経営こそが世界最高だと書いていた。

しかしそれも、バブル崩壊で完全に転調してしまう。要は「手のひら返し」というやつだ。しかもそもそもの「日本式経営」とは何だったのか、という定義すら曖昧なまま、不景気の原因を日本式経営とやらのせいにし、日経新聞の魔女狩りは進んでいく。

 

そして次に始まるのはグローバル化と成果主義である。グローバル化して業績を伸ばし、成果主義で社員を正当に評価せよというが、何ということはないただの米国式経営の焼き直しである。

こうして日経新聞が単に勝馬の尻に乗っかって風見鶏のごとく、その時その時の雰囲気を後追いで記事にしていただけということが暴露されてしまう。

 

このようにして日経新聞には何のポリシーもないということがわかっていくのだが、その中で提示されるデータもなかなか興味深いものがあった。

日本企業といえば終身雇用が特徴と言われているが、しかし実際は60〜90年代まで転職者が5割を超えている。中小企業にいたっては新卒は2割もなく、8割近くが転職者である。この時点で「終身雇用とは?」という感想しかないだろう。

また、年功序列についても大いに疑問が湧いてくる。そもそも年功で序列が決まるなら何故「窓際族」や「万年平社員」などという言葉が昭和に生まれるのだろうか? ここでも都合よく言葉を批判のために使う日経新聞の日和見主義が光る。

 

このように過去から現在(と言ってもリーマンショックまでだが)に続いて日経新聞がどのような報道を行ってきたのかが書かれている。

今の我々の不幸は経済新聞が日経新聞しかなく、「でも・しか読者」になってしまっていることだろう。しかしこの本を読めば、今後はどのように紙面に目を通していくべきか、という指針を得ることができる。日経新聞に限らず、経済関係の情報を得る人は読んでおいて損はない一冊である。

 

評価:★★★★★