山手線の車両には、しばらく前(7~8年前らしい)からドア上に15インチぐらいの液晶ディスプレイが設置されています。ここに色々な運行に関する案内や、企業のCFなどが表示されるのです。『トレインチャンネル』という名前がついているそうです。
山手線の混んだ電車に乗っていて、ふと窓ガラスに映る乗客の姿を見ると、みんな手持ち無沙汰な風情で、そろってディスプレイに目をやっているのです。ちょっと滑稽な感じもします。
でも、CF部分はともかくとして、こと運行案内に関してはこの『トレインチャンネル』のコンテンツはあまりにもお粗末な感じです。山手線はいやしくも日本の首都の中心部を走る環状線なのですが、それにしては、ちょっと恥ずかしいレベルです。しかも、何年にもわたって、全然進歩していないのであります。
ご参考に、このYouTube に山手線の『トレインチャンネル』が紹介されていますが、ちょっと見てみて下さい。色々とおかしなところがあるのです。
1. 各駅への経由時間を示す図が現れるが、同じ画面に現在時刻の表示はない
(着時刻を予測するのが目的だと思うのだけど....因みにより新しい、京浜東北線などのディスプレイには表示されますが)
2. 英訳がある項目とない項目がある
(例えば『運行情報』のページの区間を示す項目、『のりかえのご案内』のページのタイトルと出口表示、など、英訳が歯抜けなのです。あまり積極的に外国人の便宜を図ろうという意思はないようです)
3. 特に『運行情報』のページで、英文の改行がデタラメ
(単語内で改行する場合は音節にハイフンを入れて、という基礎的なルールが守られていないので、とても安っぽく見えます)
4. 『運行情報』の項目で、正確な情報を提供しようという意思が感じられない
(例えば「運転再開」という言葉だけで再開見込み時間を伝えないのでは運行情報とは言えないと思うのです。いつ再開するのか見込みを告げないと、経路変更を考える事すら出来ませんし。しかも、ご丁寧に英語でも「Operation will Resume」なんて書いてあります。廃線にはしません、って言いたいのかしら)
5. 『運行情報』の項目で、「原因」があいまい。
(英文は更にあいまい。何でもかんでも「Accident」だったりします。「運転士寝坊で遅刻」も、多分「Accident」になるのでしょう)
6. 『のりかえのご案内』のページ(車両と階段の位置関係、出口、乗換路線など)の右下に小さく「2008年6月現在」などと書かれていたりする
(この意図は何だろう?最新でないかもしれない、というコンテンツ制作者の言い訳なのでしょうか。乗車中の旅客にとっては、この案内は最新でなければ意味がないのは当然ですが、山手線の限られた駅の中で、短期間で目まぐるしく変わるとも思えないこの情報を、最新に保てないのは何故なのでしょう。もっと言うと、最新でない情報をプッシュ配信するという感覚が良く解らないのであります)
などなど。まあ、もっと探せばいろいろあるのかも知れませんが、この辺で止めときます。
この情報はWiMaxなどで無線で各車両に配信されているようですが、如何に無線技術が進化しても、コンテンツやサービスの考え方も進化しないと陳腐なものにしかならないという見本だと思います。(まあ、その点では、こういうものが首都を巡っているというのも、ある意味日本の象徴であるのかな)
ただ、開始後何年も経っても改善が見られない、という点には見過ごせないのものがあります。システムを導入した、という事実だけで自己満足に陥り、常に問題点を見直すというワークフローが、ここには感じられないのです。
こんなところに、他の多くの企業で品質・環境経営などを中心に実践されている「継続的改善」という考え方が根付いていない、JRの体質的問題の根の深さも見え隠れします。
首都圏のJRでは毎日のように事故・遅延が起こっていますが、そういう慢性的な障害の中でこの『トレインチャンネル』を見ると、何か表面的な豊かさを演じる虚しささえ感じます。---長年に亙って安全性への継続的な改善を怠って来た結果が、例えば福知山線の事故であったり、羽越線の事故だったりしたと思うのですが。
乗客は普通、他の製品・サービスと違って、鉄道会社や路線を選べないのだから、鉄道会社は自律的に最善のサービス、最善の安全を提供して欲しいのです。遠い希望かも知れませんが。