幻の手の中、混乱している男にとって、負け続けてばかりの生き方の中。
身を引いてばかりの毎日の中。時間に無駄にされるまで、時間を無駄にしてきた自分。
「いつか、分かって貰える日が来るさ。いつか、分かってくれる人が現れるさ。」と嘯いてる。
そして、本で学んだ謙虚という言葉を、分かっていながら意味を取り違えてみせて、
求める事に、手を挙げる事に、拒絶する事に、受け入れる事に、向き合えない自分がいる。
けど本当に許せないのは、「いつか」なんて永遠に来ない事を分かった上でそう言っている自分自身。
だから時に、消えてしまいたくなる。未来に向けて立てているように見える希望の橋。
それは、ハリボテだから。
僕の心は、人に売り買いされてしまう事もある。けど、僕自身は、心を決して売らなかった。
己の愛情と尊厳だけは、捨て切れなかったから。
いつも淋しかった。だから淋しさごと自分で自分を抱き締めた。
けど誰が見ても、淋しそうに見えたんでしょう。たとえ、動物から見ても。
だから、叔母のところのわんわんは、僕を一番愛してくれた。
さりぃちゃんは僕の膝で寝てくれたし、仕事で行ってるのに仕事してるよりさりぃちゃんと
遊んでる時間の方が長いのにも関わらず、はりまっちはそれを一度も怒らなかった。
愛想しないはずのちやちゃんは、けど一緒の間ずっと僕の顔をなめてくれた。
風邪を引いてた野良ちゃんは、足にすり寄ってくれた。会下山の猫ちゃんは、膝に乗ってくれた。
彼らには全く隠せなかったから、きっと、それは人にも隠せないって思って、
逆にそれを何よりもはっきりと認める事で、指摘されても話が続かなくなるよう仕向けた。
虚勢を張った。それでも僕の手を取ってくれる人がいたら、即座に崩れ去ってしまうくらい、
脆い虚勢を。
伝わらないのは、慣れてる。だから、人が関わる事の時は自分の事を主張するのを止めた。
誤解されるのは、慣れてる。だから、進んで誤解されるように生きるようになった。
傷つくのは、慣れてる。だから、僕は今もまだ生きている。
ただ、傷を見られるのは、辛かった。だから、自傷してどれが何の傷か分からなくするようになった。
痛かった。でも、やっぱり恥ずかしかったから、それも隠すのは止めた。隠し切れないから。
そしてその内、笑われる事にも、慣れた。自分でさえ、笑ってしまうくらい下手な生き方だから。
それで、納得してるはずだった。
僕は僕自身で選んだ人達の為だけに生きられたら、それでいいって思ってた。
だから、「僕が生きているのは、信頼なき日々」とまで言い切ってしまってたのに。
なのに、なんで今更、そんなつまらない事で、泣いてしまう?
自ら封じたはずの心をちょっと触られたくらいで、忘れてた感触に怯えながらも、安らいでしまう?
どうして、一度しか逢ってない人に、己の心をたやすく触らせる自分が、まだいる?
ステンレスの弦は、引きちぎった。あれは音を奏でるものであって、僕が言えなかった主張を
代弁させる機械ではないから。今の僕には、弾く資格は、ない。もしかしたら、このままずっと。
僕がいくら願っても、いくら自分の刻を止めても、周りの時間は動いてく。
心許せた二人は、去った。彼らには彼らの進むべき道があったから。
兄弟達ん中でも、鋼鉄の翼を持つ男と、卒業マジック7の肥満児は、二ヵ月後、社会に出る。
望む望まないに関わらず、今が全ての転回点ではある。それはとっくに分かってる。
価値観が、変わってく。
そして今僕は、何を求めている?・・・それが分かってたら、こんな時間まで起きてません。
ただ今言える事は、かの人は、素敵な人です。僕にはもったいないくらい。
そりゃあもう、アフロディーテさえも嫉妬で怒り狂うくらい。
他の人に取られたら、泣いてしまうくらい?
そんで人生ガイドさんは、抱えきれないくらいの薔薇の花束を今すぐ送りつけたいくらい、
別の意味で大好きな人です。
ええ、恐ろしいほどに。
あなたはきっと、僕の笑顔であり、涙。喜びであり、恐怖。
自由であり、麻薬。羞恥心であり、プライド。
そして僕は、あなたの闇の中にある、影。
全ての罪は、僕の肩に。全ての悲しみは、僕の背中に。全ての苦しみは、口移しで。
Sin