著者: 沢木 耕太郎
タイトル: 無名

沢木耕太郎の「人の砂漠 」との出会いは衝撃的だった。

「おばあさんが死んだ」という始まり。

東京の砂漠の中で

一体のミイラと老人の死。

一体、そこで何がおきたのだろうと

淡々と語る文体になぜか惹かれた。


たくさんの人が生きていて。

人の人生にはスポットは当たらないかもしれないけれど

ドラマが潜んでいる。

名もない人の生きてきたその一瞬一瞬が

とてつもなく切なくて

忘れ去られてしまうには

さびしすぎる瞬間が誰にでもある。


名もない人

自分の父親の死までの瞬間と

それに面した自分のとまどいを

この「無名」では描いている。


父との関係。

そして、父親はどんな人生を生きてきたのだろうかと。

何を考え、生きてきたのだろうかと。

父の俳句を整理しながら

こころをたどっていく。


過度な同情や憐れみを相容れず

調べ上げた事実を淡々と語る。

読み手に受け止め方をすべてゆだねるような文体は

ここちよく響くときがある。