車はボディーの前方が拉げていて、フロントガラスは砕け散って周りに散乱していた。さらにドアもグチャグチャになっていて、何かを使わないと開けれそうにない。
「救急車は呼びました。事故の状態はどうですか!?」
コンビニから店員が血相を変えてでてくる。
「ドアが開かなくて、何かテコに使えそうなものは無いですか?」
「ちょっと待っててください!」
店員はまたコンビニに慌てて戻っていく。
自分でも何か使える道具がないか周りを見渡してみる。が、鉄の扉を開けてくれる様な、丈夫な素材は見つからない。
「?」
駐車場の黒色の上に、ガラスでは無いものが街灯の光を反射していた。
「指輪?」
近寄って拾い上げると、それは『金色のリングにサファイアの様な緑石が埋め込まれた』指輪で、コンビニの駐車場には落ちているはずの無いものだが、なぜか落ちていた。
「持ってきました!!!」
店員が走って戻ってきた事に驚き、慌ててそれをポケットに押し込んだ。
店員は厚い鉄板の様な物を両手に抱えて持っていて、それが何かはわからなかったが多分、ドアを開けることはできるだろう。「ドアの隙間に差し込むんで、思いっきり蹴りましょう」
「……はい、わかりました」
ちょうどこの為に誂えたかの様に隙間に入り込んで、一つ安心することができた。
『せーのッ!』
――ガコンッ
「開いたっ」
「大丈夫ですか?」
―――しかし、ドアを開けた先にあったのは、外観を更に超える惨状だけだった。