『指導者としての心得』

・・ 柔らかなまっすぐ ・・・

私たちは、毎日選手たちにたくさんのことを語りかけます。心と言葉がピッタリのとき、その言葉はまっすぐに進みます。でも、ただのまっすぐは、人を倒してまでも突き進もうとします。人の心に残らない言葉です。でも、柔らかな心から出たまっすぐは、柔らかくてまっすぐで相手の心の形に合わせて大きくなったり、小さくなったり、いろんな形に変わったりしながら、まっすぐになって進んでいきます。柔らかな心と言葉がピッタリのとき、その言葉が人の心に響くのです。そんな言葉を持ちたいものです。

・・ みずからの意思で ・・・

競走馬の走りがいちばん美しくなるのは、競馬を引退してふるさとの牧場に帰り、自由に走り回るときだそうです。競走馬のときは、スピードはあっても走りは美しくないと言います。それは、ムチがあるからだと言います。走らされているからなのでしょうか・・・・・・。

 人間も同じ、自分の意思で動いてこそ、美しくなるのだろうと思うのです。させられる動きは決して美しいものではありません。選手一人一人が、自分の意思でプレーをする、そんなチームを作りたいものです。

  反省と謙虚さを忘れると、

         大人の仲間から離れてしまいます。

  信念と一途(いちず)さを失うと、

         選手(子ども)の群れから離れてしまいます。


                    「月間バレーボール」より抜粋

『リズムとテンポ』の重要性

 どのスポーツでも同じですが、バレーボールは特に“リズム”と“テンポ”が重要です。たった一つのプレーでリズムが大きく変わり、勝敗を左右してしまうこともよくあります。

 

心地よいリズムとテンポということがあります。例えば、アナウンサーがニュースを読むときは、100文字を20秒という『5文字を1秒』で読む速さです。「こんにちは」「ありがとう」などを1秒で読むのです。この速さが、人間にとって一番心地よい速さなのだそうです。

 自分のチームの選手たちにとって、この心地よいリズムとテンポとはいったいどのようなものなのでしょうか。指導者として、そのことをしっかり把握することが大切だと思います。

 試合中、崩れてからでは遅いのです。適切な例ではないかと思いますが危機管理に『ハインリッヒの法則』というのがあります。『1:29:300の法則』とも、言われています。1件の重大災害の裏には29件の軽度災害があり、その裏には“ヒヤッ”とした体験が300あるという理論です。試合中、1件の大きなミスが起きてからでは遅いのです。300のヒヤッのときを見極め、対処できることが大事なのではないでしょうか。

 そして、自分のチームのリズムとテンポを作る要になるのが、セッターです。セッターこそがコート内の指揮官です。強いチームには必ずすばらしいセッターが育っています。ぜひ、セッター作りに全力を注いでいただきたいと思います。

 さらに、選手一人一人の成長リズムやテンポも違います。視感覚ですぐ覚えてしまう子もいれば、筋感覚でじっくり身につけていく大器晩成型の子もいます。ただ、間違いなく言えることは、言葉はよくないですが「誰もが化ける種を持っている」ということです。選手一人一人のリズムやテンポをわかりながら指導していくことも大切なことだと思います。

【コラム FOR コーチング】



『目標と目的』

どのチームにも、どの選手にも目標があります。

県大会に出ることだったり、チームのエースになることだったり、セッターとしてチームの司令塔になることだったり等々。その目標を達成しようと一生懸命練習するのだと思います。

 

 しかし、いつも努力が報われるとは限りません。むしろ、達成されないことのほうが多いかもしれません。では、目標が達成されないと、それまでの練習や努力は価値がなかったということでしょうか!?

例えば、山登りを考えてみると、山登りの目標は頂上に立つことです。頂上を目指して、頑張るわけです。しかし、パーティー(山を登る為のチーム)が協力してもう少しで頂上、というところで天候が急変したり、仲間の体調が悪くなったり等で、やむなくリタイアせざるをえない場合もあります。

 そのような時、この山登りの価値は無であったのでしょうか!?そんなことはないと思います。逆に、天気の良い日にヘリコプターで山頂へ向かい、縄ばしごで頂上に降り立ったとします。目標は達成しましたが、山登りとしての価値はどうなのでしょう・・。

 残念ながら目標は達成されなくても、すばらしい価値のあることはたくさんあります。それは目標を達成しようと必死に努力する過程で、心も体も鍛えられ、豊かになり、人間として生きる力を身につけていくからです。この人間として生きる力を身につけることこそ、最終の目的だと思うのです。目標は達成されないことはあっても、最終的な“目的”だけは、しっかりと達成することができる指導者でありたいと思っています。