ひじり様が家を出ていってから僕の通勤方法は電車になった。車を雇うなんて僕には出来ない。
電車に揺られている僕。暇だったので早朝買ったナスを電車の脇につけて飛ばしていた。
誰にも見えないようにバリアをはっている。
うん、美しいナスだ。太陽の光をまばゆく跳ね返している。感心していると後ろから声が聞こえてきた。

「課長みてください。ナスが飛んでいます。」
「本当だ」
「課長ほら」
「ああ」

ナ、ナニィイイ
あの二人にはこのナスが見えていると言うのか。
いつの間にかナスは地面に落ちていた。
散歩中のおばあちゃんはそのナスを拾って交番に届けた。
落とし主は見つからなかったので警官は持って帰って弟に麻婆茄子にしてもらった。
たいそう美味であったそうな。