(書評)戦略「脳」を鍛える(御立尚資著) | 元官僚戦略コンサルタントのブログ

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某省でキャリア官僚として5年間程度勤務し、その後戦略コンサルタントに転じた著者が、官僚からコンサルへの転職活動を具体的に紹介するとともに、日々の仕事や生活の中で日本経済について思うこと、また読んだ本の書評などを書いていきます。

著者の御立氏は、BCGの現日本支社長。一流の戦略コンサルタントとして、ワールドビジネスサテライトのコメンテーターも務めており、毎回様々な経済のニュースについて新鮮な視点を提供してくれます。

本書は、そんな御立氏が、「戦略的に考えるとはどういうことか」を体系的に解説した本です。


まず、ビジネスにおける戦略とは「競争相手に勝つためのケンカの仕方」と定義した上で、
勝てる戦略=定石+インサイト
と分解します。
そして、勝てる戦略をつくる上では、インサイト(洞察力)が非常に大切だと説きます。本書では、このインサイトという概念が何かを、またインサイトを働かせるにはどうすればよいかを、具体例も交えながら丁寧に解説していきます。


まず前半では、インサイトの構成要素の一つである「思考のスピード」を上げるための方法が解説されます。具体的には、スケールカーブ、経験曲線、V字カーブ、アドバンテージマトリックスなど、これまでにコンサルティングファームが開発してきたツールの紹介です。こうした、ビジネスにおける「法則」を理解し、それを適切にあてはめることが、スピード感をもって効率的に戦略をつくる上で重要と説きます。


そして後半では、洞察する際の「頭の使い方」が詳述されます。具体的には、ホワイトスペースを探したり、進化論的に考えたり、顧客視点で考えたり、アナロジーで考えるなど。評価できるのは、決して抽象論に堕することなく、「町のパン屋さん」を題材として、それぞれのコツを適用すると具体的にどんなアイデアが出てくるかを示している点です。ここで解説されている内容は、いわば戦略コンサルタントの頭の使い方であり、コンサルタントの着眼点を垣間見る意味でも興味深い内容となっています。


このように、経営分析のツールを俯瞰するという意味でも、また戦略コンサルタントの頭の使い方を知るという意味でも有益な本です。
実際に会社などで経営戦略の策定に携わっている方、またビジネス理論の勉強のとっかかりにしたい方にはお薦めしたい本です。