コンサルに転職して一番驚いたのが、パワーポイントを作るのを専門にお仕事されている方がいらっしゃることです。
戦略コンサルではない知人数名にこの話をしたところ、いずれも少し驚かれました。やはり、パワポの専門部隊がいるのは戦略コンサル会社特有のようです。
「パワポを専門に作る人って何?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうから、少し詳しくご説明します。
戦略コンサルの最終的なアウトプットはパワーポイントで作られた報告書です。弊社では、大体30枚くらいにまとめます。標準的なプロジェクト期間は3か月程度ですが、その3か月間コンサルタントが調べ、インタビューで情報を集め、そして考え抜いた成果をその30枚の中に結晶化させるわけです。3カ月のプロジェクトで数千万円いただきますから、その30枚のパワポ資料は数千万円の価値があるということになります。
このように、最終的に成果をパワーポイントに結実させなければならないため、コンサルタントは原則としてパワポで資料を作ります。当然、社内での議論用のメモはワードで作りますし、また定量分析には当然エクセルを使いますが、他の業種、職種に比べると圧倒的にパワポの使用率は高いと思います。
そこで、パワポの専門部隊が必要になるわけです。
戦略コンサルファームには、各ファームごとにパワポのフォーマットが存在します。ひな型とも言えるでしょうか。お客さんに見せても恥ずかしくないように、きっちりとフォーマットを揃えるわけです。コンサルタント自らもパワポで資料を作りますが、フォーマットの細部を調整したり、あるいは図表を見栄え良く整えたりするところまで自分で行うのは、ものすごく時間がかかります。コンサルタントの存在意義は「考え抜くこと」にありますから、こうした枝葉の作業に極力時間を取られないよう、専門部隊の方がいらっしゃるわけです。この方たちのパワポのスキルにはびっくりします。びっくりするくらいきれいに色調、パーツの配置、強調部分などを仕上げてくださいます。私はどちらかというと横着な方なので(笑)、手書きの図解をお渡しして仕上げてもらったり良くしています。
当然、夜中に作業することもありますから、自分でもきれいに仕上げられるスキルも身につけておく必要がありますが、個人的にはこの超合理的な役割分担の仕組みを重宝し、最大限活用していきたいと考えています。
ちなみに、前職の官庁には、当然こんな仕組みはありませんでした。
官庁が作るパワポは、文字だらけで読みづらく、クオリティも低いです。しょうもないパワポを作るために、日夜官僚たちは残業をしています。
官庁にも、コンサルティングファームのようにパワポ専門部隊を雇えば、官僚のリソース配分も変わり、もっといい政策が作れるのになと思ったりします。