相手方から一方的な宣戦布告を受けたのだ。
実情内情は知らない。 正直に云うとあまり興味は無い。
唯、大切な人や場所が傷付けられるのを黙って見ているのは嫌だった。
此処はボクにとって大事な場所で、大切な人が日々暮らしている。
其れだけで愛剣「ベアトリーチェ」を再び武器として振るうには、十二分な理由だった。
いや、其れは建前かも知れない。
まずは一撃、徒手空拳での城壁への正拳。
久々に、本当に久々に、城壁を全力全壊で殴った瞬間、
「ゾクゾク」
と背中に雷が駆けた。
拳に走る反作用の痛み。 ヒビの入った城壁。
自分でもその時、ニタニタと下品な笑みを浮べている事が理解出来た。
鏡など無くとも、理解出来た。
つまりはそうなんだ。
音を生み出すのも
料理が好きなのも
上品で在る事を心掛けているのも (もちろん此れは尊敬する姉様に近付きたい気持ちも在るけれど)
創造の努力は、此の下卑た破壊衝動を隠すための仮面なんだ。
生来の負けず嫌いと、破壊に対する欲望、衝動。
「・・・あハは」
普段は虚無の深淵に沈めている、剥き出しの自分自身。
戦場の空気が否応無く覚醒させていく。
虚無の中から意識を揺さぶる。
「どうせ今此処で死んでも、お前には失うモノなど無いんだ。もっともっと壊してしまえ。全てを、お前自身を!」
パァンッ! と、鋭い音が意識と一緒に弾けた。
「キヒッ!wwキヒヒヒヒッ!!ww」
瞬間、纏っていた集中力や闘気が、ドス黒い殺気と殺意で埋められていく。
ベアトリーチェの装飾が、普段の無骨な鉄塊から、一目と見るも醜悪な禍々しい魔剣へと変わる。
常識から掛け離れた脚力で敵兵士の一陣に突っ込むと、雄叫びを上げながら竜巻の如く魔剣を振り回す。
「狂い!!禍い!!呪り!!威し!!哭かせ!!縛り!!殺し!!消す!!」
武術でも剣術でもない、暴走する純粋な力、破壊衝動。
冷静さや知性、理性など欠片も無い。
悪果を招く唯の黒い動物が一頭、其処には居た。