アテンプト | STRANGER

アテンプト

夢は一瞬の間に、長い時間を感覚的に与える。
目の前の視界が縦に割れ、半分から左をコンクリートが占領。
右に見えるのは、汚く汚れた相手の靴裏。
時間はあの時から寸分も流れていない。
顎の左下に痛烈な痛みが残り、視界は有難くも歪む。
右に見えていた汚い靴裏が、自分の頭を踏みつける。
コンクリートが頬に刺さり、生々しい血の臭いが鼻に届く。
嫌気が差す前に相手の膝を殴り、股間を蹴り上げる。
よろけて後退する相手をおいて、即座に立ち上がる。
デコボコなビルの谷間、逃げ道はさながら迷路か、
迷い込んだ試験マウスが二匹、中間地点で悶えている。
マウスは噛み付きはしないものの、それでもしかと相手を見据え。
今にも邪魔者を排除しようと、互いの脳内に探りを入れる。
未開拓の思考に踏み込む術を持たない者同士。
目先の勝利の打開策は、迷宮入りしたまま誰にも開かれず、
じっと見据えた相手の目に映る曇天を伺い、
隙間差すことのない光を見出そうと手を伸ばす。
夢の中では宙に浮いた二人が、地に足つけて拳を造る。
切り取った世界の断片、階層的な幾重にも重なるパラダイム。
それぞれがシナプスのように手を伸ばし、繋がり合う。
折り重なったドットが遠目に具現化される。
感覚器に伝わるときには、一眼レフをも凌駕する。
高解像度を突き破って、飛び込むものを左に避ける。
右に造ったカウンターが、相手の腹を捉える。
反転し振りかざした相手の右脚が、左の膝上に落ちる。
重みが痛みに変化するのを待たず、踏み込んで左から拳を送る。
頬へ転送された左拳が、めり込んで添付した後悔が相手に再生。
渾身が響いたのか、相手は再びベッドイン。
少し強めのビル風が、二人の間を吹き抜けてゆく。