「コーヒー」 集客用のくだらない文章書きの合間にコーヒー飲み、豆を仕入れるために「帷子珈琲」へ寄った。 中坊の時にフィリップマーローの真似から自分はコーヒーを飲むようになった。 マーローはコーヒーの淹れ方やら流儀にこだわるくせに、美味そうに飲んでいるシーンが、少なくとも自分の記憶にはない。 コーヒーを不味そうに飲む映画や小説はよく知っているが、うまそうに飲む映画や小説は殆ど覚えていない。 唯一覚えているのが映画「老人と海」。 主演のスペンサートレーシー扮する堅物の漁師がブリキのマグカップに並々と注がれたコーヒーをとても美味そうに飲むシーンだけは、何故かよく覚えている。 注がれたコーヒーはとても美味そうに見えなし、うまいと呟くわけでもない。 ただ爺さんがマグカップの取っ手をしわくちゃで剛毛が生えた手で掴み、そのまま口元に運んで一口含み、わずかに微笑むだけで、確かセリフもなかった。 その瞬間、だたっ広い空と海とコーヒーマグを手に持ち満足そうに微笑む爺さんのだけで完結した世界が、そこにはあった。 覚えているのはそのシーンだけ、後はほとんど覚えていない。 集客のためのくだらない文章を放り出す浣腸の代わりに、コーヒーを飲んでいるような奴が、どんに上等なものを飲んだところで、不味そうに啜っているようにしか見えないだろう。 一度でいいから、あんな風にうまそうにコーヒーを飲めたらいいなと思う。

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