「おいしいダシの取り方を今一度科学的に考えて見ましょう」は、節辰商店の第4代当主、故・勝田辰吉がお客様のために作成した小冊子です。

 

この小冊子が刊行された背景に、「科学的アプローチによって顧客の問題解決のお手伝いをさせて頂くことが節辰商店の使命である」という強い意志を感じます。また、当時の経験と勘に頼る業界の風習に対して、別の方向から風穴を開けたかったのだと思います。

 

25年も前の文章になりますが、現在でも十分通用する内容を含んでいることから、インターネットで公開させて頂くこととしました。

 

となっており、新田はこの記事を見つけて以来自分でも出汁を取る時の参考にしています。

ネットに転がってる内容なので、いつ無くなってもおかしくないので以下をここに転写します。

 

 

だしの種類

アジ(鯵) 

 

イ)   アジ(鯵)
アジ科に属する魚の名称で一般にマアジ(真鯵)が多く、北海道、三陸方面から朝鮮に至る迄広く分布して居りますが、千葉県以南九州にとくに多く56月の産卵前が最も美味ですが、周年殆ど味は変わりません。味にくせが無いので惣菜用、干物、練製品の原料として好評の為、最近は煮干は僅少です。尚ラーメン用のスープとして好まれて居ります。

 

ロ)   ムロアジ(室鯵)
一般にムロアジ(アオ、シロ、クチブト)と、マルアジ(アカゼ、オアカムロ)に区別して居ります。ムロアジは、暖海性で本邦、伊豆、土佐、九州から南洋方面にまで広く分布し、特に棒受網での漁獲が多いですが、伊豆方面ではクサヤの干物並にヒラキとして珍重されて居ります。
旨味に富み味に甘味があり、まろやかであると云われ、ダシ汁が冷めても臭みが出ませんが、長時間煮つめると渋みが出ると云われて居りますが、名古屋地方では、だしとして一番使用されて居ります。

 

 

ウルメイワシ


イワシ科の魚で主産地は伊豆、紀州、四国、九州、山陰方面です。大体マイワシより暖海性で、丸干としては愛媛、日向が一番美味であります。マイワシと違って血合肉が比較的少なく濃厚な味があります。当地では冬場の使用が多く、関西で特に好まれ消費されて居ります。

 

 

カツオ(鰹)

 

カツオ科の魚。南洋(太平洋)では年間を通じて鮪と同様水揚されるようになりましたが、近年巻網の鰹漁が多くなり出しました。機械で網を入れ、一度に沢山獲る為人件費が少なくすみ原価が安くつく為ですが、一本釣に比較して、味は今一つの様です。

 

日本沿岸では春から秋にかけて、沖縄方面から黒潮に乗って北上した物が漁獲されます。日本海側では稀であります。鮮魚は一般に脂肪の多い物が美味として賞味されて居りますが、鰹節には脂肪の少ない物が良く、枕崎、山川(九州)が昨今では主産地となり、土佐は宗田カツオが主体です。焼津は最大の水揚港ですが、冷凍品はアメリカへ輸出されて缶詰等に消化され、鰹節の生産量は往時と比べ減少しています。

 

 

メジ(鮪)

 

マグロ科の魚。マグロの幼魚の名称です。マグロは九州方面より暖かくなるにつれて北上、四国、紀州から三陸を経て北海道沿岸まで現われ、日本海側でも北上します。

 

マグロは刺身及び、寿司種の王座ですが、メジは高級料理店の吸物等のだしに使用されて居ります。上品なだしが出ます。尚「糸がき」として使用されて居ります。

 

 

ソウダガツオ(宗田鰹)

 

カツオ科の魚。当地から関西方面ではメジカ(目近)といいます。尚、秋の初めに獲れる小形を笹目近と称し、当地では一番好まれます。太平洋岸、日本海いづれにも分布し、沖縄、台湾方面でも多く獲れます。ヒラとマルの2種があり、ヒラの方が大形になりますが、質の良い品は少ない様です。伊豆、紀州、土佐(清水)が節として一番良質で好まれます。鰹節に一番近い味で鰹に比較して味が強いので好まれます。夏期に特に好まれ使用されます。

 

 

サバ(鯖)

 

サバ科の魚。マサバ(ホンサバ)とゴマサバの2種があり、マサバはゴマサバより扁平の体を持っている為ヒラサバともいわれますが、節に良いものはゴマサバです。千葉より九州方面迄太平洋側で獲れます。九州屋久島で獲れる割鯖は屋久鯖として、東京のそば屋さんに好まれます。尚、東京方面はカビ付を好みます。日本海のサバは節に向きません。

 

 

こんぶだし

 

昆布は褐藻類コンブ科に含まれる、海草の総称です。北海道沿岸に多産して居りますが、青森県より岩手県付近まで獲れて居ります。

 

こんぶの旨味成分はグルタミン酸を中心にアラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸類とマンニットなどの糖類が中心です。昆布の表面についている白い粉はマンニットやグルタミン酸なので、使用前に乾いた布で表面のほこりを落とす程度にとめます。水洗いをするとおいしい成分が流されてしまいます。昆布にはアルギン酸などヌルヌルした成分と昆布特有のフノリ臭があり、長時間の煮すぎはダシ汁がまずくなり、色も出ます。

 

ダシの取り方は、水が摂氏80度になったところで昆布を入れ、沸騰直前に引き上げるのが一番簡単で良い方法です。水に浸けるのも良い方法ですが、手順が面倒です。

 

 

しいたけだし

 

椎茸には呈味度の高いグアニール酸、果糖類、そのほか数知れぬ天然成分が含まれております。「干椎茸を浸した水は捨てないで料理に使え」といわれます。つけ水そのものをなめてみても一寸カビ臭いだけで、おいしいとはとてもいえません。ところが、これを汁物や煮物に使うと、その料理が驚く程おいしくなります。実はこの汁の中にレオチオニンというカビの臭いに似た香り成分があり、これが1PPm程加わるだけで料理が大変おいしくなる事が解明されています。

 

 

混合だし

 

カツオブシはイノシン酸、昆布にはグルタミン酸、しいたけにはグアニール酸とそれぞれ天然のうま味が含まれており、この三者の味が加わると味の強さが飛躍的に増加します。これを味の相乗作用と申します。従って混合ダシは、鰹節、昆布の単独のときよりも、ダシの量をそれぞれ半分以下に減らしても一段と強い旨味が得られます。

 

使用する水の量

天然調味料の香気並に呈味性成分流出曲線
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

鉄分・カルシューム・マグネシュームの多い硬水、殺菌用の塩素・酸類・食塩なども重大な影響を及ぼします。たとえば、水に鉄分・カルシューム分があると、これらの金属が蛋白質やアミノ酸など旨味の主体となる成分と結合して旨味成分を溶けにくくします。

 

また、食品の色素などは鉄分と化学反応をおこし、料理の色がきたなく黒ずみます。最近では浄水器(活性炭ろ過水等)を使用されるお店が多くなって来ております。

尚、水道水はカルキを含んで居りますので、香りばかりか旨味も減る様です。くみ置きの水の方がだしらしい風味がある様です。

 

  1. かつお節の香り
    かつお節の風味をよくしているものに香りがあります。香気は、かつお節製造工程中に行われる燻乾の時も吸着される成分からくる香気、かびの持つ脂肪分解酵素により生成された香気、赤脂肪と同様かびによって生成された蛋白質に由来する香気の三者が、かつお節特有の香りを形成しますが、香りの成分は揮発性ですから、短時間の過熱で大部分発散してしまいます。

     
  2. 流失速度
    原料の削った厚みにより多少流出は異なります。かつお節だし汁のうま味の主役は、イノシン酸を中心とする核酸関連物質及びアミノ酸類である(新調味科学講座6)と書いてあります。削節のJAS規格も味の濃さをあらわす残エキス(塩分を差引した)の測定を、法定純エキス分として、味を下記の通り規定しております。

 

JAS規格 法定純エキス分

かつお削りぶし 13%以上

まぐろ(鮪)ぶし 12%以上

目近削りぶし 12%以上

さば削りぶし 11%以上

むろあじ削りぶし 10%以上

 

 

 

だしの取り方

1.かつお節等薄削り

 

料理屋さん等の澄汁は、薄く削ったかつお節を沸とう直前に入れ、ひと煮たちさせたら(約12分程度)火を止めてこしわけて下さい。尚、加熱する時は、魚臭を飛ばす為必ず鍋の蓋を取って下さい。


溶けだすアミノ酸類を科学的に測ってみますと、加熱に一分間浸すだけで殆ど完全においしい成分が出てしまいます。

 

また、水から入れた方が沸とう直前に入れたものよりわずかにアミノ酸の溶けだす量は多いのですが、生臭味が強くなります。一分以上だたせると苦みやしぶ味など不用の成分が出てきます。
尚、麺類店の厚削りの場合は長く煮詰めますが(エキス分の溶出が充分出る様にする為)その間にいやな味のもとである「アク」を十分に除去してください。(泡、アクは生臭味、渋味、エグ味等が有ります)

 

2.ささ削(目近、惣田節)むろ、さば削り(鰹節、鯖節)

 

薄削りの澄汁は1.に準じてご使用ください。

 

但し厚削りの場合は、薄味の料理は、5分~10分見当、麺類のだし汁は、15分~30
それ以上ですと容器の種類により違いますが、水が蒸発してダシの量が少なくなり、呈味は強く感じられますが、同時にしぶ味や魚臭が強く感じられます。なお、その上旨味がダシガラに吸着されますので、効率も悪くなります。だしが出ましたらなるべく早くこしわけること、もし手順の都合でしばらく放置する場合には、食塩を必ず一つまみ入れてください。浸透圧の関係で溶け出たうま味成分が再吸収されるのは多少おさえられ、うま味が保持されます。(こつの化学)

 

 

緩衝作用と相乗効果

緩衝作用とは、溶液に酸、またはアルカリを加えて起こるPHの急激な変動を調節する力のことであります。うどん屋さんで20分以上も煮出すのは結局「濃縮」している訳で、濃いダシには「醤油(たまり)」も沢山交って緩衝作用で独特の美味な濃い汁ができるわけであります。天然醤油(たまり)には乳酸をはじめ微量ですが香りの成分が60種類も含まれており、この香が不快な味や臭いを消します。

 

グルタミン酸系の調味料である醤油と核酸系の旨味成分を持つ「だし」の組み合わせは、異質の旨味を混ぜることで「相乗効果」といって一種類の味だけの場合の数十倍のおいしさになり、味をくどくすることなく旨味の強さを増して味を豊かにしてくれます。また塩を塩辛く感じさせない「塩なれ効果」は醤油も味噌もそのアミノ酸などの働きにより、塩辛さが感じられないように致します。

 

なお、また味噌汁の煮出し汁として一般的(家庭用)に煮干が使用されて居りますが、「煮干の煮出し汁」は、味噌の緩衝能が強く香りも高いので、魚臭の濃厚な煮干を用いても、3%程度の煮出し汁の場合は生臭みを感じさせないばかりでなく味噌汁の味を「こく」あるものにします。味噌には魚臭を除去する(マスキング効果)機能があるからです。味噌汁の煮出し汁にかつお節を用いることが少ないのは、味噌の味と香りが強すぎて、かつお節の上品な風味を活かしてい用いることが出来ないからであります。(新調理科学講座6