『ループ・オブ・ザ・コード』荻堂顕著(新潮社)を読みました。

 

 

写真は書影のみです。リンクしておりません。

 

疫病禍を経験した未来。WEO(世界生存機関)に所属するアルフォンソは、20年前に歴史の一切が〈抹消〉された、かつての独裁国家〈イグノラビムス〉へと派遣される。いまや多数の欧米企業が参入し、「再生のテーマパーク」とも揶揄される彼の国で、児童200名以上が原因不明の発作に見舞われる奇病を発症、その現地調査を命じられたのだった。
サウダージという言葉に背を向け続けてきた者として、民族のアイデンティティが消去された〈イグノラビムス〉に居心地の良さを覚えはじめるアルフォンソ。しかし、時を同じくして、非常事態が発生。〈抹消〉の元凶となった生物兵器が何者かによって強奪されたのだ。そして、「悲劇」の再来を恐れたWEO事務総長から、密命を言い渡される。国家機関単位の任務を、たった数人で遂行することになったアルフォンソたちが辿り着く、衝撃の真実とは、一体。生命倫理の根幹と善悪の境界を問う、近未来諜報小説の新たな地平。

 

とってもとっても面白かったです!

★★★★★5つ!爆  笑

 

かつて生物兵器を使用した20年前の歴史をいっさい封印され、独裁国家であった過去は<以前>と呼ばれて抹消され、口に出すことを禁じられ、言葉をかえ国名をかえ、自国の歴史を教わることはなく、新しく人工的に生み出された国イグノラビムス。再生のテーマパークと呼ばれ、外見的にはアメリカ的な街並みを持った国。イグノラビムスとはラテン語で「知らない」の未来形だそうです。

そのイグノラビムスで児童200名近くに謎の発作が発症します。WEO(世界生存機関)に所属しているアルフォンソに、謎の発作の調査依頼がくだります。

 

さらにアルフォンソに情報がもたされます。かつて使われた生物兵器と、それを開発した博士とがともに強奪されたという事実。犯人たちは生物兵器を自分たちが使用するために変異させるのではないかという疑いがもたれました。

児童たちの広範囲で多発的に起きる発作は人為的なものなのか、伝染病なのか、郷土病なのか?アルフォンソが謎に挑みます。

 

本作品は、謎の発作の真相を追う医療ミステリーであり、真犯人に迫るハードボイルド・アクション小説であり、過去を封印して生きることについて考えさせられる社会派小説であり、架空の国家をめぐるSF小説であり…。とにかくめっぽう面白い!グッド!

 

著者略歴をみたら1994年生まれとあり、20代でこんな作品を…!?と、その天才ぶりに絶句してしまいました。

 

読み終えたあと、検索で小川哲さんと荻堂さんとの対談を発見。こんなプラチナ対談、まぶしすぎる。キラキラ

 

小説の中に「歴史」を造る 日本SF界の新鋭・小川哲と荻堂顕が語った、創作との向き合い方 | 対談・鼎談 | Book Bang -ブックバン-