2021年も残りあとわずか。少し早いですが、今年読んで面白かった本の総まとめです。

申し訳ありませんが、Ameba Pickのリンクがうまくいかなかったので、書影は画像のみです。

(一番下に2021.12.22追記あり)

 

● マーサ・ウェルズ 『マーダーボット・ダイアリー(上・下)』

 

人と目を合わせるのが嫌いだけれど、人を守る熱い使命感に燃えている自虐的語りが面白いマーダーボットが主役。連ドラ大好きでめちゃ強。英語の“I”を“弊機(へいき)”と訳した中原さんの功績は多大。作中に出てくるほかのボットたちも個性的で素晴らしい。続編もでています。

 

[マーサ・ウェルズ, 中原 尚哉]のマーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫)

 

● カルミネ・アバーテ 『海と山のオムレツ』

 

おいしい食事、美しい風景と言葉にあふれたエッセイ。見知らぬ料理の名前が、まるで魔法の呪文のようにイタリアの輝く情景へといざなってくれます。

 

 

● シャルル・フレジェ 『WILDER MANN(ワイルドマン)』

 

フランスの写真家、シャルル・フレジェによる写真集。ヨーロッパに伝わる祭りに登場する獣人を撮った写真集。民俗学的なアプローチではなく、美しい造形を風景の中に収めた写真は、まるでハイファッション誌かファンタジー映画。同じ写真家による日本を撮った『ヨウカイノシマ』もおすすめ。

 

 

● 太田愛  『天上の葦(上・下)』

 

『犯罪者』『幻夏』につづくミステリー三部作の完結編。太田愛さんはドラマ『相棒』の脚本も書かれており、社会派ミステリーが素晴らしい。三部作どれも名作ですが、戦争と報道の関係について迫った本作が、特に心に響きました。瀬戸内海の島の描写が横溝正史っぽくてドキドキ。

 

[太田 愛]の天上の葦 上 (角川文庫)

 

● 野崎まど 『2』

 

『〔映〕アムリタ』に始まる6部作の最終作。バラバラの話に思えた前5部作品がひとつに集結するさまがたまらない!前5部作はどの順で読んでもいいのですが、この本だけは一番最後に読むのがマストです。人知を超える存在にがっぷり四つに組んで描く野崎さんの勇気、最高。

 

[野崎 まど]の2 新装版 【新装版】2 (メディアワークス文庫)

 

● ピーター・トライアス 『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』

 

『マーダーボット』につづき、もう一冊中原さんの翻訳本を選んでしまいました。だって、面白いので!

第二次世界大戦で日本が勝ち、アメリカが日本の領土になっている世界を描いた歴史改編SF。軍隊口調の女刑事・槻野と、女性に優しいベン、対照的なふたりのバディぶりが面白い。マンガ『カイジ』みたいなドキドキする場面もあります。

 

[ピーター トライアス, 中原 尚哉]のユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

 

● くどうれいん 『うたうおばけ』

 

昨年末に読んだエッセイですが、くどうさんの小説が今年7月の芥川賞候補作として話題になっていたので、今年のおすすめ本としてランクインさせます。微妙な気持ちや空気をすくった、独特の視点が面白い、くすっと笑えるエッセイ。クイズで告白する男の子の話が特に好き。

 

 

ほかに、オバマ元大統領が勧めている、韓国四世代を描いた大河小説、ミン・ジン・リー作『パチンコ』、不思議な中華幻想世界を書く勝山海百合さんの小説(中でも『狂書伝』がおすすめ。)なども、今年読んで面白かった本です。

 

(2021.12.22追記)

年内滑りこみで読んで、感嘆した一冊。おすすめです。

 

● グレゴリー・ケズナジャット 『鴨川ランナー』

 

日本人が外国で暮らしたときの文化の差異について書かれた本は数多くあれど、英語圏の人間が日本での暮らしで感じる居心地の悪さについてリアルに描かれた小説です。日本語をいくら学んでも「英語を話せる人」として遇され、名前をもった一人の人間として遇されない失望。牧師アルバイト小説が書かれたのは、これが初めてでは!?

 

[グレゴリー・ケズナジャット]の鴨川ランナー

 

来年はどんな面白い本に出会えるか楽しみです。ウインク みなさま、よい年をお過ごしください。