『ロイヤルシアターの幽霊たち』ジェラルディン・マコックラン著(金原瑞人/吉原菜穂訳)小学館を読みました。

 

イングランドの海辺の保養地シーショーにあるロイヤルシアターは数年前に閉鎖され、様々な時代の個性的な幽霊たちが棲みついていた。嵐の日に本を守って海にのまれた元図書館司書、脱毛と脱「せりふ」ノイローゼになった元俳優、暴走族の乱闘に巻き込まれて死んだモッズ族の少年。劇場再生のためにやってきた俳優夫婦の娘グレイシーは、なぜか彼らを見ることができ、生前の話を聞かせてくれとせがむ。最初は訝しんでいた幽霊たちも、やがてグレイシーに心を許すように。そんな中、劇場を壊そうと企む者が現れる。

 

『世界のはての少年』で知られるマコックラン(マコーリアンと表示されるときもあります。)が描く物語。使われなくなった劇場にいる幽霊たちなんて、あらすじを聞くだけでワクワクします!赤い緞帳を模した表紙も素敵です。ニコニコ

 

この物語は、イギリスに実際にある海辺の町「マーゲート」をモデルにして書かれています。ちなみにマーゲートにある劇場は廃墟ではなく、今なお現役だそうですよ。

 

海辺のさびれた保養地シーショーにある劇場を立て直すべくやってきた若夫婦と少女グレイシー。少女には劇場に居る幽霊たちが見えました。グレイシーは幽霊たちに、なぜ幽霊になったのか、自分語りをするように促します。そしてグレイシーは彼ら幽霊たちそれぞれの願いをかなえるべく、彼らを劇場の外に連れ出します。

 

幽霊たちの面々は、「海に流された図書館」の司書だった女性メルーシュ、海水浴場の移動更衣室をひいていた馬が海に走り出し、結果溺死した御者のポドキンズ。

建築家のバーチ。俳優夫婦のローランド&歌姫リリー。元サーカス団長のジョージ卿。病気で幼くして死んだふたごのジムとジョーン。ケンカで亡くなったモッズのマイキー。バンジョー弾きの黒塗り芸人モーリスなどなど。幽霊たちの中には実在する画家ターナーも!

 

幽霊は風が吹く場所が嫌いとか、描写がミョーにリアルで、物語にひきこまれてしまいました。

幽霊たちは時々ちらりと人間に姿がみえる時があり、それはどういうときかという法則も面白かったです。

 

劇場を直すには多額のお金が必要、そこにサッパーという怪しげな出資者が現れます。実は彼は、古い劇場は爆破してしまい、残った土地だけいただこうとしている悪いやつ。彼から両親を救うべく、グレイシーと劇場の幽霊たちは町中の幽霊たちを集め、ある計画をたてます。

 

「幽霊と劇場」という、いかにもイギリスらしい組み合わせの物語です。

幽霊たちひとりひとりが舞台にたって自分語りをする場面がまさに演劇的!

この児童書を舞台化するのも、面白いかも。爆  笑