『白と黒のとびら』川添愛著(東京大学出版会)を読みました。

 

 

魔法使いに弟子入りした少年ガレット。彼は魔法使いになるための勉強をしていくなかで、奇妙な「遺跡」や「言語」に出会います。最後の謎を解いたとき、主人公におとずれたのは。

 

automaton(オートマトン)とは、ある目的にかなった多少とも複雑な動作をする機械のこと。外部からの刺激(入力信号)に応じて、内部状態が変化して出力信号(つまり応答)を外部に出すものを指すそうです。本書の裏テーマは「オートマトンとはどういうものか」。

しかし、その裏テーマを意識しなくても、物語としてとても楽しく興味深く読める小説です。本書も同著者の『数の女王』のように、ファンタジー小説仕立てになっています。

 

少年ガレットは、偉大なる魔術師アルドゥインの弟子。でもアルドゥインは魔法を教えるより前に、彼に魔法を理解するための、言語を習わせます。妖精の言語である古代ルル語や、小人の言語である古代クフ語。それらの言語は、文字を●○のふたつで表記するもの。

 

それらの文字が何を意味するかはアルドゥインにもわかりませんが、

冒頭が「○●」であれば第何代ルル語、

「○○●●」と、○と●を同じ数だけ重ねれば第何代クフ語、

というように、○と●の重ね方で、その言語の世代と特徴が分かります。

 

小人たちはその言語をつかって、遺跡をつくっていました。

その遺跡では白い扉と同じだけ黒い扉をあけたら出口にでられたり、回文のように白と黒の扉を開ければ出口に出られるなど、言語によって遺跡の脱出方法が違います。

 

魔法には「延ばし」と「省き」があり、決して変わらないその言語の特徴的な部分を見つけ、その特徴部分を除いた他の部分を「延ばし」たり「省い」たりすることにより、他人を攻撃したり(自分の剣が伸びたり)、自分を守ったり(相手の剣を短くしたり)することができます。

 

さまざまな特徴をもつ言語の遺跡脱出方法が、パズルのようで面白かったです。

この小説をゲームに作り替えたら、ハマる子、いそう・・・。ウインク