「月を追いかけて」
傾く月を追いかけている
辿り着くことのない場所へ向かって
立ち止まることができない僕は
まるで周遊魚
呼吸さえも忘れて闇雲に駆ける
思いの先にあるはずの
安らぎの匂い
枕はそのままに
愛はそのままに
痛みはずっと後ろの方で
名残惜しそうに眺めている
諦めがちな遊星に
慰めの言葉が軽くてたまらない
君への思いを
僕は何処かに置いて来てしまった
大きな穴は空いたまま
月が照らす胸の影は
デジタルの形に浮かび上がる
(こんなはずじゃなかった)
いつの間にか周回遅れ
谷底ような難コースを
ただ空を見上げて往けば
音もなく降る月光の
冷徹に見せる現実を横目に
虚ろな魂は震えるばかり
(まだ僕はここにいるんだ)
見たくもない世界の
知りたくもないニュースに
足元をすくわれそうになるけれど
心地よいスピードで
あの月を追いかけている時
何もかも忘れて
透明になれるんだ
追いかけることの
その幸福をかみしめて
今夜も空に浮かぶ月を追いかける
涙はもう乾いてしまった
