ひとりごつん<プロローグ> | スッタカの歌うたいBlog

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ストウタカシのブログ

思いついて、小説らしきものを書いてみました。
夏の時間つぶしにどうぞ。

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座っていた。じっとりと空気がまとわりつく真っ暗闇の洞窟で。
いつからこうしているのか、カレンダーはずっとそのままだ。少なくとも2回はめくっていない。
隣のダイニングのテーブルには手をつけず朽ちてしまった食品と、その残骸にたかる虫たちの音が嫌な音を立てていた。
足は既に床の一部にように溶けかかり、あぐらの形のまま感覚すらなく、うつむく僕を驚くほどしっかりと支えていた。

埃をかぶった天井裏のような頭を動かす。
蜘蛛の巣が切れ、少しずつ、おぼろげな記憶をたどっていく。と同時に次第に明るくなる部屋。

そうだ。
僕は、本郷勉は、あのときも、こうして君といたんだ。


3年前の夏。
あの夜も蒸し暑かった。短い梅雨が明け、都内では連日の猛暑日と熱帯夜と熱中症にご注意のアナウンスが呪文のように繰り返されていた。そんな週末の新宿西口交差点では、居酒屋やカラオケ店から大量に吐き出されたクールビズのサラリーマンやらOLやら学生、つまりは酔っ払いたちが、酒とタバコと香水の匂いを、何やらわからない言葉と一緒にまき散らしていた。
そんな醜態を横目で見る僕も、当然その中の一人で、同じようなアルコール混じりの臭気を、侮蔑と共に猥雑な街に放出していた。

その時の僕は、仮にスーツを着ていたとしても一見してサラリーマンではなかったし、学生に見間違えられる年でもない、かといってヤクザなアウトローとも見えない、得体の知れない中年男だった。

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