別にすぐまた会おうなんて思ってたわけじゃない。

そんな話もしてないし、カズにも言われてない。

 

 

でも、2週間連絡がないってどうなんだろう。

僕ならもう少し積極的に・・・。

 

って言っても、僕も自分からしようなんて思ってもいないのだから偉そうには言えないか。

 

 

「なんか翔さん不機嫌?」

 

松本が僕の顔を覗き込んで言う。

 

 

「明日発売だよ?もっとテンション上がってるかと思った。」

 

「ん?んー。まあ嬉しいよりは不安だよね。」

 

「売れるかなーって?」

 

「うん。」

 

 

「まあ、別にベストセラー狙ってるわけじゃないんでしょ?」

 

「はは。それはね。」

 

「俺は重版2回くらいしたいな。」

 

目を輝かせて松本が言う。

初めての出版という訳ではないし、今までの本はすべて長い時間をかけてだけど重版している。

 

 

「言うねー。でも松本の写真の質からしたら行けそうな気がする。」

 

「翔さんもだけど、俺も頑張りましたよね。」

 

「な、次は連名にしようぜ?俺の文章なんて松本の写真なしじゃなんもなんないんだからさ。」

 

 松本が無言で僕の目を伺うように見つめる。

 

 

「なによ。本気だよ?」

 

「知ってます。いや、優しいなって。相葉さんに聞きましたよ。今回も頼んでくれたって。」

 

「聞いたの?」

 

「直接謝られました。今回はごめんねって。」

 

僕はただそれだけが今回の写真集について不満だったのだ。

 

 

「大きめに名前入れとくから次はちゃんと話し合おうって。」

 

「絶対そうしような?」

 

「はい。」

 

松本が嬉しそうに頷く。

 

 

「あ、翔さんサインしてください。」

 

「なんで持ってんの。」

 

「ふはは。貰ったときなんか慌ただしかったじゃないですか。だから今日かなって。」

 

「確かに。かして?」

 

僕は表紙を開けたところにサインをする。

ただ縦に名前を書いただけだけど。

 

 

「松本へ。」

 

「ああ。」

 

「写真カードにもしてもらえば良かった。持ってこなかった。」

 

「やめて?」

 

「ふははは。」

 

言われた通りに名前を書き加えてから写真集を閉じて、ズレていたカバーを直して松本に渡す。

 

 

「翔さんのファンの方にはあげるんですか?」

 

「ん?買ってくれるとは言ってたけど。そか、献本してもいいのか。」

 

「喜びますね。」

 

「けど2冊はいらないよね。」

 

「いるでしょ。保存版と読むやつと。2冊注文してる確率高いですけどね。」

 

「まじで?」

 

「え、翔さんやったことないですか?」

 

「・・・あったわ。ははは。」

 

 

だとすると尚更もういらないかもしれない。

次いつ会えることになるかも分からないしな。

もしかしたらもう会えないかもしれないし。

 

 

僕はなぜだか少しネガティブな気分になっていた。

 

 

 

 

(つづく)