「じゃあ俺も言ってもいい?」

 

「ん?」

 

潤が急に僕の視線と自分のそれをしっかりと合わせてくる。

 

「な、なに。どしたの。」

 

「俺は翔が好きだよ。」

 

「そ、ま、まあ知ってるよ、そんなの。俺らは、 」

 

イケメンの威力と突然の改まった言葉にひるんでしまう。

 

 

「違う。翔の智へのと同じやつ。」

 

「え。」

 

 

これはあまりに突然ではないだろうか。

いや、そうじゃないのかもしれない。

僕はただ自分のことばかりに精一杯だった時間が長かっただけで。

 

 

潤の視線はもう手元に落ちていて、僕はその前髪とまつ毛とを見つめる。

見慣れているはずの。

だけど、ちょっと違う。

 

 

「そ、まじで?いや、まじだよね。悪い。」

 

「ふは。まったくどうしてくれんの?俺は墓場まで持ってくつもりだったってのに。」

 

「・・・俺のせいだね?」

 

「そうだね。」

 

「すまん。」

 

肉団子だかつみれだかを口に入れる潤が目尻を下げる。

 

 

「んふふ。冗談。翔のせいじゃない。俺も同じ。もうダメだったってだけ。」

 

「そ、そか。」

 

 

「いいんじゃない?俺はなんかスッキリしたけど?」

 

確かに潤の瞳には輝きがしっかりと戻って見える。

そうか。

潤の瞳を翳らせていたのは僕だったのか。

まったく自分のことばかりで情けない。

 

 

「変な同情しないでよ?」

 

「同情?」

 

「智と上手くいってもいかなくても、俺らは変わらない。」

 

「お、おう。変わらないよ。潤がそれでいいなら。」

 

「うん。」

 

「ってか、なにか変わるとしたって同情からじゃないよ。」

 

「変えたくないのよ。いい方じゃないなら。」

 

「それは、うん。」

 

 

潤と僕なんて確率は少しもないのだろうかと都合よく考える。

失礼だな。

今までどれだけ智、智言ってきたんだ。

智だからこんなに夢中になっているのだから。

 

 

「翔のことだから、俺とでもいいなんて思い始めるかもだけど、それは気の迷いだからな。翔は智がよくて、智だからそんなに好きなんだかんな。」

 

「な・・・いいよ。潤がそんなこと言わなくても。分かってるよ。適当なことはしない。約束する。」

 

「ん。頑張って。」

 

 

「ひとつだけ言っていい?」

 

「ん?」

 

スッキリした表情でモグモグする潤が僕の言葉を待つ。

 

 

「お前カッコ良すぎ。」

 

「はぁ?お前って言うな。」

 

「初めて言ったわ。ここにはふさわしい気がした。」

 

「ふはは。ざけんな。」

 

「かっこよ!」

 

 

「ふははは!うるせえ、砕けろ。呪ってやる。」

 

「ははは!それだけはやめろー。」

 

「足の小指ぶつけろ。」

 

「ははははは!」

 

 

潤と僕は久しぶりに中学生のようにはしゃいで。

お腹も心もふくふくに膨れて昼休みを終えた。

 

 

そして僕は智に告白することに決めた。

 

 

 

 

(つづく)