「そうだ、潤くん。」

「はいよ。」

 

 

僕はニノの冠番組に出演するためにテレビ局に来ていた。

ニノはいつでもどこにいても同じで、まるで時間が戻ったみたいな気持ちになる。

 

 

「この間、大野さんとこ泊まったでしょ?」

「・・・うん?」

「そのときコレ忘れてった?」

 

「え、なんで?」

 

ニノが傍にあった小さなバッグから取り出したのは、僕が智のところにしていってから目にしていなかった指輪だった。

 

 

「昨日会ったとき預かった。洗面所にあったって言ってたかな。」

「・・・・。」

「外でちょっとだけよ?俺時間なくて。」

「ふは。なに言い訳みたいの。いらないよ。」

 

 

ニノは僕をジーッと見つめてくる。

なにか吐かせたいみたいだけど、あいにく何も吐き出すものが無い。

 

 

「・・・J。」

「・・・なによ?」

「俺には言ってもいいんじゃないの?」

「ん?」

 

「泊まったんでしょ?もう告白はしたの?」

 

 

「は?」

「は?じゃないのよ。まったくJも翔ちゃんも。」

「いやいや。」

 

 

「アイツもアイツなのよ。平等に距離を保てないならさあ・・・。」

「なに?智がなにか言ってたの?」

「いや?あの人がそんなこと考えてるわけないでしょ。」

 

 

そうなのだろうか。

ニノは口ではそう言って、本当は智の鋭さや気配りの面を知っている。

 

 

誰にどう見えていても、僕のスタンスは変わらないけど。

ちょっとニノの言うことなら聞いてみたいとも思う。

 

 

「あの人は・・・。」

 

でも言葉が続かない。

何を聞いていいのか、なんて聞いていいのか。

 

 

「やめたほうがいいよ。いや、どれだけ魅力的かは俺も分かってるつもりよ?一緒にいてあれだけ安心できる相手もなかなかいないし。かと思えばなんかドキドキさせてくんじゃん。最低なのよ。」

 

「ふはは。なんでそんなに。」

 

 

「俺はJにも翔ちゃんにももっと笑ってて欲しいのよ。翔ちゃんなんて、会ってもため息が多すぎて。この間だって、なんか変な料理の写真見つめてるし。」

「・・・カルパッチョ。」

「え?」

「あ、いや。」

 

 

あの写真は、翔さんを支えてるんだ。

智はそうなると分かって、あえて自分の顔じゃないものを送ったのかもしれない。

 

 

翔さんを繋ぎとめておきたくて・・・?

 

あれが手元にあったら、見てしまうことも思い出してしまうことも、容易に想像できる。

翔さんのことなら、智だってよく分かってるはずだから。

 

 

嫉妬で息苦しくなる。

つい数日前に、あんなふうに智への愛情を分かちあったのに。

同志だなんて思って、気分だって良かったのに。

 

 

自己嫌悪も合わさって、吐き気がしてきた。

 

 

 

 

(つづく)

 

♡ フォロワーさんが300人となりました。

♡ いつもありがとうございます。

♡ マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願い致します。