「ん、あれ?翔ちゃんのお茶いれなかったけど・・・。」
並んでニコニコしている翔ちゃんと僕を振り向いた相葉ちゃんは、両手にひとつづつ持っているお茶を交互に見た。
「分けるからいいよ。」
翔ちゃんがなにか言ってしまう前に僕が応えた。
「・・・う、うん。それで大丈夫。」
翔ちゃんはちょっとびっくりしたようだったけど、賛成してくれた。
「あ、そ?じゃあ。え、大福もこんなにちっこいの分けんの?」
「「うん。」」
翔ちゃんと僕の声が重なる。

「なになに?どうゆうこと?」
相葉ちゃんが目尻をしわくちゃにして笑う。
「「・・・ねえ。」」
僕らはまた声を重ねて、鏡に映したようにシンクロした動作で見つめ合って首をかしげた。
「双子!?双子なの?」
相葉ちゃんが僕らを交互に指差す。
「ははははは。すげえ。」
「ふははは。シンクロ。」

「今日ずっと一緒にいたの?長過ぎんじゃないの?ちょっと離れなさいよ。」
相葉ちゃんが可笑しそうに言って、僕らも笑った。


くすぐったい。
翔ちゃんと時間を過ごすとたまにこんなことがある。
ニノとなるのとはちょっと違っていた。
翔ちゃんといると、空気が染まるのだ。
その染まった空気の中で、全部が通じ合うような感覚。
飛ばした感情や言葉やなんか全部が、どこかに失われることなくふわりとお互いに届く。
そして、簡単すぎるくらいに当たり前に共感して理解する。

なんだろう。
僕は翔ちゃんとのこの空気が大好きで、本当にずっと大好きで。
これが生まれるときは決まって、翔ちゃんに抱きつきたくなる。
若いときは実際抱きついていたかもしれない。
でも最近は、そんな衝動と闘うのだ。


「やだよ。最近のこの人忙しくてこんなにくっついてられることないのよ。」
翔ちゃんが反抗的な口調で相葉ちゃんに言う。
「え、そう?俺はけっこう一緒にいるけどな。」
「だからだよっ。相葉くんもニノも松潤も。君らはシェアの精神が足らんのだ。」
翔ちゃんは人差し指をぷりぷりと振りながら相葉ちゃんに抗議している。

真隣にいる僕はそんな翔ちゃんが嬉しくて愛おしくて、やっぱり抱きつきたくなっていた。

「それは、おおちゃんのチョイスでしょ。ねえ?」
「ふふふ。」
相葉ちゃんに振られたけど、僕は言葉になんてできずにちょっと笑った。
「・・・・。」
隣からは翔ちゃんが無言でクリクリの瞳を光らせてくる。
「翔ちゃん。ふふ。」
「どうなの?智くんだって俺ともっといたいと思わないの?」
「思うよ。」
「でしょ?・・・でしょ?ほらあ。」
「はいはいはいはい。じゃあ、今度一緒にいたくなったら遠慮なく入ってきてくださいね。」
相葉ちゃんが適当な感じで翔ちゃんをなだめて、大福を手に取る。
「なにその言い方。」
翔ちゃんも半笑いで文句をいいつつ僕らの大福を手に取った。

そして3人で笑って。

翔ちゃんは包みを剥がした大福を僕の口元に運んで、僕はちょっとトキメキながらちょうど半分くらいまでかじって、それから翔ちゃんが残りの半分を口に入れるのをガン見した。
口の中がほんのりと甘いのしか分からなかった。


今日夢を見るとしたら、あの口元が出てきますように。
お茶に手を伸ばしながら密かに祈ったりした。


(つづく)