(翔)

あの、智くんと僕とで作り出す空気感は、欲目じゃなくちょっと特別なものだと思う。
メンバーの言う「おじさんチーム」である僕らが作り上げてきた絆は、他の誰とも結べない。
「お兄さんチーム」だけどね、とは言いづらい年にもなってきた。
重ねてきたものが違うのだ。
僕ばかりが智くんを好きなわけじゃないと思える瞬間がたくさんある。
それが、どういう種類の好きであっても、僕はとりあえずいいのだ。


だけど、急に心が弱って、それでは足りないと思うことがある。

ニノとばかり楽しそうにしないでよ。
僕だけにその笑顔を見せてよ。
僕のものになればいいのに。
僕が智くんを笑顔にしたいのに。




「俺リーダーとMJ倶楽部と大野丸の合体版やることになったの。ね、リーダー。」
松潤が嬉しそうに報告している。
「まじかよ!なんで、俺は相葉さんとツーリングなのに?」
ニノが悔しそうな声を上げる。
「ちょいちょいちょい。」
相葉くんがニノに抗議する。
「やっとよ?ずっと乗りたかったのよ、大野丸。リーダーにもスタッフにも言い続けてさ。」
「俺はお先に乗らせてもらってるので。なんか心配なことあったら何でも聞いて?」
相葉くんが先輩風を吹かせる。
「あ、それはよろしくお願いします。」
松潤と相葉くんは向き合ってお辞儀をしている。
松潤の嬉しそうな顔。

「いいなぁ。」
ニノは声に出しているけど、僕は声には出さずに激しく嫉妬していた。
相葉くんのときの2人のムード。
智くんが誰かを自分のテリトリーに迎え入れたときのその人への愛情のかけ方はすごいのだ。
あのVTRを観たとき、僕はとんでもなくソワソワしていた。
そんな目で相葉くんを見ないで。
そんなに近くで微笑み合わないで。


「俺ちょっとサプライズ考えてんの。」
「お、俺もだぞ。」
「まじで。」
「絶対釣りにはまらせる。」
「いいね。楽しみ。」
「ふふ。」
2人ともウキウキが止まらないといった様子で話している。

ちょっと見つめ合う時間が長過ぎませんかね。
僕はなんだかギスギスした気持ちで2人を見ていた。


「でも俺と松潤がやったら次は翔ちゃんかニノでしょ?」
相葉くんが言う。
「俺は船がダメだから、大野丸は来ないかもしれない。」
ニノが残念そうに言う。
「翔ちゃんは船いけるもんね。」
智くんが僕に言う。
「・・・うん。」
ニノだけやらないなんてあり得ないから、きっと僕の番も来ないと思っていた。


「大野さん、なにか他の企画考えてもらってよ。」
「ははは。免許取ったばっかだぞ?まだ変わんないだろ。」
ニノの言葉に智くんは笑って言った。
確かに。
企画が変わればニノと僕にも回ってくるかもしれない。

祈るしかない。
僕は密かに指をクロスした。

(つづく)