「あれ?俺らって結構気が合うのかな・・・。」
「今更?」
「ふふ。共通点なんてないと思ってた。」
「ひどいな。」
「別に悪いことじゃないよ。」
「そう・・・?」
「うん。」

あなたは目尻にシワを寄せてとても優しく微笑む。
俺は、俺とあなたが両極にいる二人だって言われてることを知っている。
だけど、それは俺らの距離を拡げる言葉じゃない。
だって俺の側からしたら、あなたを尊敬する理由でしかないんだ。

「じゃあ、今度一緒にどっか行こうよ。」
「それは遠慮しとくよ。」
「またそれだ。・・・なんで?」
「理由なんてないけど。」
「うそつけ。そこまで断って理由がないとか。」
「ふふ。あったとしても意識してねえよ。」
「わけわかんねえ。」

こんな会話をしてたって、俺は別に不機嫌になっているわけじゃない。
あなたは昔から変わらなくて、俺は昔からあなたが大好きだった。
一緒に出かけないからって、あなたに嫌われていないことくらい知っている。
というか、むしろ、あなたは俺にはすごくストレートな愛情表現をしてくれていると思っている。
嬉しくて仕方ないって顔を見せないようにするのは一苦労だ。

「リーダー。」
「ん。」
あなたの肩に腕を乗せて話しかける。
ピクリとも動揺しないばかりか、重そうな素振りさえ見せない。
「お願いがあるんだけど。」
「大変なこと?」
「どうかな。」
「大変なことならそれが誕生日プレゼントな。」
「まじで。」
「ふふ。」

「まあ、いいけど。大変じゃないと思うし。」
「なにさ。」
「あんさ、ちょっとあっちで話させて。」
「座ったままでしようぜ。」
急に疲れてるみたいな表情をする。
「お願い。プレゼントの代わりでもいいから。」
「やだよ。俺もうお前にあげたいフィギュア見つけてあんもん。」
「フィギュアいらねえよ。」
俺たちは笑って、あなたはようやく腰を上げた。

「わがままな奴だな。」
そんなこと欠片も思っていなそうな顔であなたが言う。
「俺、可愛がられてるからさ。」
「そうだな。」
「ふふ。否定しないの?」
「しねえよ。可愛いもん。」
「・・・そういうのやめて。キュンとしちゃうから。」
割と真面目な声で言った。

「キュンとしてなにが悪いんだ。」
「悪くないの?」
「やなのか?」
「いや、嫌だっていうんじゃないけど。」
「じゃあいいだろうよ。」
「・・・なんか。」
「ん?」
「苛ついてる?」

「・・・ちょっと緊張してる。」
急に可愛らしい笑顔でそんなことを言う。
「はは。なんで?」
「お前が呼び出すからだろうよ。」
「あ、そういうこと?」
「そういうこと?ってなんだよ。」
「俺と2人で話すの緊張するんだ、リーダー。」
なんとなく挑発的な言い方になってしまう。

「・・・叱られそうで怖えもん。」
「叱られるようなことしたのか?」
「・・・・。」
「何をした?智。」
「・・・ジャケット・・・。」
「ん?」
「あの、松潤のお気に入りのジャケット・・・。」
「あれが何?」
ちょっとドキッとした。
あれはただ気に入っているわけじゃない。

「あれ、俺と交換して着たことあるやつでしょ?」
「え?うん。覚えてた?」
「忘れねえよ。派手だもん。」
「派手ではないわ。大野さんだって似合ってたでしょ?」
「ふふ。びっくりしたな。」
「ふふふ。で、あれがどうした。」
「内側のあの白いピラピラあんじゃん。」
タグのことだろう。
ピラピラしてはいないけど。

「あれに俺の名前書いた。」
「は?」
「端っこに智って書いた。」
「ははははは!なんだよそれ。」
「まあもう俺のものでもあるかなって。」
「・・・・。まあいいけど。」
「いいの!?」
驚いている顔がまた愛おしい。

「あ、待って。やっぱダメ。代わりに俺の言うこと聞いて。」
「・・・ずりいな。」

 

悔しそうな顔を作るあなたに、俺はひとつだけお願いしたいことがあった。

 

 

 

 

(つづく)