嵐 Waiting for you

 

僕らが付き合いだしたのは、もう卒業を目前に控えた冬だった。

 

 

僕はずっと彼女が好きで、友達の振りをしてそばにいて、このままでいいやなんて思っていた。だけど、進路が違う僕らが一緒にいられるのなんて卒業までだって、彼女がふと言った。

 

会えなくなるなんて考えてもいなかった。彼女を笑わせるために、毎日があるんだと思っていた僕は、悩みもせずにその夜彼女に想いを告げた。

 

彼女は僕を睨みつけて、

 

「遅い!」

 

と一言投げつけてきた。

 

思わずきょとんとした僕が、彼女の瞳を見つめたまま固まっていたら、

 

「もう会えなくなるって、覚悟したんだから。遅い。」

 

と彼女が泣き出してしまった。

 

友達として、何度も肩を抱いてきた。でも、いつもは笑っていたから、僕は少しだけ戸惑っていた。

くるりと身体の向きを変えた彼女は、僕の胸で泣き始めた。ほんのりと香ってくるいつもの彼女の匂いが、突然自分のものになった気がして、僕は理性を失いかけた。

 

「大丈夫だろ。

ちゃんと、一緒にいられるだろ。これからだって。」

 

うわずった声で言う僕をまだポロポロと涙をこぼしながら見上げた彼女の唇に、短いキスをする。

離して見つめると、また大粒の涙をこぼして、ムードがないと文句を言う。

 

「キスはしたいときにするの。」

 

変に威張った僕に、彼女は泣き笑いした。

そしてその額に、僕はもう一度、今度は少し長めのキスをした。

 

 

そんな短い時間の中で、僕らは友達から恋人に変わって、まだ遠くまでは見えない未来の話を少しだけした。寒さと怖さで寄り添ったまま、また少し彼女は泣いたけど。

 

 

きっと大丈夫だって、分からなくても言っていればいい。

過ぎていく時は怖いけど、僕らは手を繋いでいればいい。時に流れに逆らって、時にくっついたまま流されて。

変わっていくものはあるけれど、僕らは一緒にいればいい。変わっていく部分も、変わらない部分も、きちんと見つめて行けばいい。

僕は、そんなことを思っていた。

 

 

透き通った冬の空を見上げる涙の乾きかけた横顔に、また不意打ちのキスをしたら、今度は怒らずに照れ笑いをした。