Bang Bang

*BL要素アリです

 

「おはよ。」

 

和の笑顔は昨日のお昼に待ち合わせ場所で会ったときの笑顔となんら変わらない、どこか涼しげな、でも冷たいわけではなくて、どこまでも優しい色をたたえていた。

 

「おはよ。」

 

つい目を逸らしてしまう。

 

「どしたの。」

 

穏やかな甘い声で和が聞く。

 

「ん・・・。」

 

昨夜の激しさが夢じゃないことを、身体が覚えていて照れくさい。裸のままでベッドに2人でいることも、何よりの証拠だろう。

耳が熱い。

 

どうしていいか分からずに、少し強く目を閉じる。和が動く音がして、息が頬に掛かるところで、囁くような声がする。

 

「後悔してる?」

 

慌てて目を開けて和の瞳を見つけると、見つめ返して首を振る。目の前の和は、それを見て嬉しそうに微笑んで、

 

「なら良かった。」

 

と、今度は彼のほうが視線を逸らして言う。

反対に、見つめてしまう。

 

透き通るような綺麗な肌。左の頬とあごにあるホクロ。奥まった二重に、深く茶色い瞳。高いけど、可愛らしい丸みを帯びた鼻。笑うと、上がるというよりは脇にすっと伸びる口角に、ほとんど見えなくなる上唇。それをそっと支えるようにしてある、ふっくらとした下唇。

 

「なによ?」

 

ぶっきらぼうな言葉遣いの割には、温かい響き。いつも聞き惚れてしまって、返事が遅れる。

 

「・・・。ん?あ、あぁ。なんでもない。」

「あなたは本当に何も言わないんだから。」

「すまん。」

「まぁ、もういい加減、何を考えてるかもわかるし。」

「え?そうなの?」

「はい。」

 

目じりをこれでもかと下げて和は微笑んで、くいっと首をかしげる。

嬉し恥ずかしいとはこのことだろう。

 

「あぁぁぁ!なんか!恥ずかしい、これ!」

 

体中のいろんなところがむずかゆくなって、バタバタと足を動かす。

 

「あははははははは!」

 

大きな声で、本当に可笑しそうに和は笑って、二の腕に優しく猫パンチを見舞ってくる。そして、掛け布団を剥いだかとおもうと、脇や太ももをくすぐってきた。弱いところまで、悔しいほどに知り尽くされている。

 

でも、そうして2人で朝から大騒ぎして、いつものペースを取り戻すことができた。

 

コーヒーを入れ、買ってきてあったメロンパンを、ソファで寄り添って食べた。

 

だけど、黙っているとまた、ドラマの回想シーンのように浮かんできてしまう。

 

甘くも激しく、止めることなんて、どちらにもできなかった。熱を帯びた身体が、思考まで停止させたように、求め合ってしまった。

メロンパンを噛み締める振動が、ぴたりと触れ合う肩に腕に伝わる。

 

今日は休みだし、夜まで待つ必要なんて、僕らにはない。