さすらい署長・風間昭平 ~さぬき金毘羅殺人事件~ | 文才がなくても描けるドラマ脚本術

さすらい署長・風間昭平 ~さぬき金毘羅殺人事件~

さすらい署長・風間昭平 ~さぬき金毘羅殺人事件~

 口内炎を歯ブラシでえぐってしまい、ご飯の時間が拷問に感じる…Story Puzzle Shu です。今週はなぜか2時間ドラマが少ない。先週の土曜日は企画書を書いていて、ロミオ・タッキ―を録画するの、忘れちゃいました。

なので、44日に放送された水曜ミステリー9から『さすらい署長・風間昭平 ~さぬき金毘羅殺人事件~』中津文彦:原作(光文社文庫)

水曜ミステリー9は2週続けてお休みです。残念です。


さてさて、このさすらい署長シリーズはちょっと面白い経過で小説がシリーズ化されています。元々は中津文彦:原作『北斗警察物語・七人の共犯者』(1985年カドカワノベルズ)から「みちのく 北上川殺人事件」として放送されて、好評だったことからドラマの第二弾が企画。北斗警察物語の風間署長は、ごくごく普通の署長さんで、決してさすらっていた訳ではありません。いってみれば、ドラマの「さすらい署長」という設定が面白くて、全く別キャラクターとして小説でも再登場! これは企画アイデアの素晴らしさですね。

今回放送のドラマでなるほど!と思ったのは「どんな話か」が明確だったこと。私は企画書を出す度に「だからお前は何か書きたいんだ!」と言われ続けた記憶があります。「なにを今更…」と思うかもしれませんが、いや、これが中々難しいのです。

企画書を書き始めた頃、「どんな話なのか、一言でまとめなさい」とプロデューサーの方に言われました。その時の例が、映画『E.T.』。「迷子になった宇宙人の子どもを(地球の子どもが)宇宙に返してあげるお話」と説明して下さるプロデューサーのお言葉に「なるほど!」と思ったのでした。

以来、企画書やシナリオを書き出す前に、12行で書きたいことが明確にならないうちは、書き出さないことにしています。

今回は「たった一つの嘘のために、殺人を犯してしまった女の話」です。

物語の舞台は瀬戸内海、讃岐平野と小豆島。風間署長は高松中央署の署長として赴任。そこで元ホステスの女の刺殺死体が発見され、小豆島の海岸で権藤というその女の愛人の撲殺死体が発見される。二人は美人局や強請りをしていたらしい…。そんな中で、現在刑に服している西山の存在が浮かんでくる。かつて母親の治療費を捻出するために会社の金を横領したことを権藤に知られ、一億円以上の金を強請られていた。西山は地検への告発状によって逮捕・服役していた。その告発状がいったいどこから出てきたのかは謎のまま。権藤はその出所を探っていた。告発のせいで、権藤は金づるを失ったからだ。

犯人はかつての恋人。会社のエリートだった西山に出世に繋がる縁談があったために、西山の子どもを宿していながら自ら身を引いた。だがその子どもは流産。たった一人の身内である父親も亡くなった彼女の所へ、権藤に強請られ続けて、それから逃れるために死を決意した西山が会いに来たのだった。権藤から西山を助けるために地検に告発状を送ったが、告発した事実を西山が知ってしまえば、もう二度と西山は自分の所へ戻ってこない…。しかし権藤は執念で彼女の存在を見つけ…。彼女は告発した事実を知られないために権藤とその愛人を殺してしまった。

しかし! 西山は「自分にやり直すチャンスをくれた」と、告発した人に感謝していたのだった。彼女はそんな西山の気持を知らない…。知っていたら、殺人を犯す必要なんて全くなかったのに 


「たった一つの嘘で、幸せになれるなら…」

このセリフは原作にはありません。でもその一言で、殺人の動機も、そして西山への愛も伝わる。「嘘」といっても愛する人を助けるための嘘ですよ! それまでも彼女は十分辛い思いをしてきたのに…!!! 原作の彼女はここまで辛い人生送ってない。

 そうです。2時間ドラマは、決して「ゆきずり殺人」「快楽殺人」が動機ではいけないのです犯人に同情してしまう動機。それでも犯罪を正さなければいけない主人公!

 余談ですが、今回、原作では西山の事件は「株のインサイダー取引」だったものがドラマでは「会社の金の横領」となっていました。小説として読むのであればインサイダー取引の部分は面白かったのですが、ドラマでは「横領」のほうがわかりやすい。本筋にそれほど影響がない部分だったら、わかりやすさを優先させるほうが、感情移入しやすいですね。

 

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