(BL小説/櫻葉妄想)

 

 

 『明日、貴方を下さい』

 

坊っちゃまは、執事が告げた言葉に興奮しすぎて、屋敷の中をウロウロ動き回っていた。

 

「翔ちゃん……お誕生日のおねだり……可愛すぎる」

 

綺麗で、可愛くて、色っぽい執事の翔ちゃん。

 

坊っちゃまの長い片思いが、終わるかもしれない。

 

「うわー……どうしよ……明日って……、明日って……」

 

 

 

……明日って、いつのこと?

 

朝だって、昼だって、夜だって明日だ。

 

なんなら、もうすぐ日付が変わって明日になる。

 

忙しなく動き回ると、お腹が空いて目が回ってきた。

 

「そうだった……翔ちゃんと食事……」

 

二人とも、食べないでお昼寝してたから、執事もお腹が空いてるはずだった。

 

 

 

「坊っちゃま」

 

そこへニッコリ笑って、執事が現れた。

 

「お食事にしましょう」

 

「うん」

 

二人で、食堂のテーブルに座る。

 

「私たちに、作ってくださってたようです、いただきましょう。」

 

野菜のたくさん入った優しい色のスープ。

 

煮込んだお肉料理。

 

小さくて、軽い色々なパン。

 

いつものコックは、執事が気に入ってるだけあって、その腕や気遣いも一流だ。

 

向かい合って、仲良く食事する。

 

こんな風に食べるのは、初めてだった。

 

滅多に執事は、同席しないから。

 

いつも「私は執事ですから」と。

 

「美味しいですね、坊っちゃま」

 

「翔ちゃんと食べれて、嬉しいよ」

 

坊っちゃまの嬉しそうな顔に、執事は笑顔になって、お肉を少し大きめに切ると、自分の口に運んだ。

 

「翔ちゃん?」

 

「んん」

 

口に咥えて、坊っちゃまに食べろと、口を突き出してくる。

 

「え……た、食べんの?」

 

坊っちゃまが、真っ赤になって驚いた。

 

執事が咥えたまま、ゆっくり頷く。

 

立ち上がって、坊っちゃまがその口から、肉の塊を口移しに貰う。

 

「翔ちゃんの味がして、美味しい」

 

今度は、執事が真っ赤になった。

 

「翔ちゃん、付いてる」

 

そう言って、坊っちゃまが、執事の口元も舌で舐めて。

 

二人の唇 が重 なると、しばらく離れなかった。

 

 

――――――

 

 

食事の後片付けが終わって、執事が戻ると、坊っちゃまが大きな箱や紙袋を持ってきた。

 

「翔ちゃんに買って用意した、着てみて?」

 

「そんな……私にはもったいない……」

 

「だめ、絶対に着て?」

 

「ありがとうございます、では……」

 

戸惑った表情で、執事が隣の部屋へ着替えに行った。

 

「翔ちゃん」

 

一言呟いて、その後ろ姿を、そっと坊っちゃまが追いかけた。

 

 

――――――

 

 

執事が、上着を脱いでシャツを脱いだところで、背中から坊っちゃまが、抱きしめてきた。

 

一瞬驚いたけれど、微笑んで執事がいう。

 

「……まだ明日じゃありませんよ?」

 

「もう日付、変わったよ」

 

「だから、今日になってしまったでしょう?」

 

うふふと、また楽しそうに執事が笑う。

 

「……じゃあ、明日はいらない、今日の翔ちゃんをもらう」

 

さらに抱きしめられて、首筋に顔を埋めてくる。

 

「……言ったでしょう? 私は貴方のものですと。……好きになさって下さいませ」

 

言い終わる前に、激しく口付けられて。

 

 

執事の着ていたものは、全て足元に、捨てられた。

 

 

 

――――――

 

 

坊っちゃまは、お祝いしたい。

 

この世で、一番愛してる人のお誕生日を。

 

だから、その夜は朝まで愛し合って、お祝いしたのでした。

 

happy birthday ♡

 

 

 

 

 

 

 

「坊っちゃまはお祝いしたい」<end>グリーンハーツラブラブ笑ううさぎ