(BL/櫻葉妄想+末ズ妄想)
(6−2)『坊っちゃまとイタズラなキス』
「では、お茶のご用意をして参ります」
執事は、雅紀坊っちゃまと二宮を置いて部屋を出て行った。
「おまえ……なんて呼べばいい?」
「え……なんでも良いけど。みんなは、カズって」
「じゃあ、カズ。翔ちゃんは俺専属だからな? あんまりワガママ言うなよ?」
「それって、フリなの? 甘えた方がいいの?」
「バカ、そんなわけないだろ?」
「ふふふ……マー君て、面白いね」
「マー君て、呼ぶなっ。雅紀さんだろ?」
「大野さんは、マー君て言うよ?」
「あの人は聞かないんだ、いつも言ってるのに。翔ちゃんを翔ちゃんて馴れ馴れしく言うし」
二宮は、お腹を抱えて笑い出した。
「僕も、マー君と、翔ちゃんて呼ぼうっと」
「コラっ。追い出すゾッ」
「やだよー。ずっと住もうかなあ。翔ちゃん優秀で優しいもん」
「出てけ!」
「やだあ♬」
坊っちゃまが怒るほど、二宮は楽しそうだ。
それを、こっそりドアの影から、執事が微笑んで、見つめていた。
「だいたい、なんで朝早くから来たんだよ」
「それは……」
口籠ってしまう。
ドアから視線を感じて見ると、執事が見えた。
すると二宮からだけ見える執事が、口元に内緒ですよ?という風に指を当てて微笑んだ。
「え……と、内緒?」
「内緒って、おかしいだろ?」
執事が、ドアを開けて入ってきた。
「雅紀様、お客様を困らせては、いけませんよ?」
「ええ? 翔ちゃんは知ってるの?」
「さあ、どうでしょう」
「翔ちゃんてば、ずるい」
うふふと、執事は笑うと二宮の手を引いて立たせた。
「お着替えをご用意しました、お召し替えしましょうか」
「着替え? コイツ自分で出来るだろ?」
「大野様から、頼まれましたので」
そう言って、二宮の腰を抱くようにして、部屋を出て行ってしまった。
坊っちゃまは、面白くない。
以前、美人や美少年にモテると執事が言った事を思い出した。
「翔ちゃんのバカっ」
ソファのクッションを全部壁にぶつけて呟いた。
******
大きな鏡に、美しい服が並んだクローゼットのある部屋。
二宮を丁寧に、執事は着替えさせた。
恋人と喧嘩とは、どの程度か調べる為でもあった。
「とても、色が白くていらっしゃいますね? 日焼け出来ないでしょう? 赤く腫れてしまいそうですね」
「うん、痛いから夏は、困っちゃう」
「おや……シャツが破れてますね」
予想通り着ていた肌着が、無理矢理裂いたように破れていて、執事は顔を曇らせた。
「あ……あの何でもないよ? これは潤君がやったんじゃないんだよ? 滅多にないよ? 大丈夫」
「潤君……彼氏ですか?」
「うん……」
必死で言い訳するが、何かありそうな雰囲気だった。
「滅多にないのなら……大丈夫ですね、でも」
執事は、気が付かないフリで微笑んだ。
それを見て、ホッとしたような二宮は、胸を撫で下ろしたよう。
優しく、全身着替えさせて貰って、椅子に腰掛けると二宮は苦笑した。
「いいなあ……マー君。いつも優しくして貰ってるんだねえ」
寂しそうな顔に、執事はちょっと考え込んで、隣に座ると提案する。
「嫉妬深い男は、たまには可愛いですが。暴力は許せませんねえ。ちょっと悪戯しましょうか?」
「イタズラ?」
「男なんて、単純ですよ? 後悔させて、嫉妬で死にそうにさせましょう」
何気に、恐ろしいセリフだが、執事は楽しそうに笑った。
続く
軽い喧嘩しちゃった末ズちゃん。執事さまが先にイタズラを仕掛けます。
ちょっとSっぽい彼氏ですが、とっても可愛らしいのです。(末ズはSとMだと良いなと思ってる困った私です)