(BL/MS/潤翔妄想小説)
*Dom/subユニバース・パロ風
*この前に(7)も同時にUP*
(8)
現実の音が消えて、翔は夢の中にいた。
ふわふわと気持ちの良い世界。
触れる感覚も、吸い込む息すら、甘くて気持ちいい。
ゆらゆらと体が揺れる。
見えなくなった現実の代わりに、昔の思い出が甦る。
まだ、子供だった。
自分の性についてなど、考えた事もなかった。
そんなある日、一人でいた人気のない裏通りで、知らない男に呼び止められた。
呼び止められて、振り返ると鋭い視線を浴びて、動けなくなった。
「……やはり、Subだな」
男は、強い視線を翔に向けたまま、近付いてくる。
体が震える。
恐ろしいのに、声も出ない。
「command」
男の声が、頭の中まで響いてくる。
「undressing……(脱げ)」
ものすごい嫌悪感を感じるのに、力が入らなくて逃げられない。
男は、イラっとした感じで、無理やり服を脱がせようとする。
(いやっ!)
悲鳴をあげたいのに、心の中でしか叫べない。
男の手が、下へ伸びようとした時。
「止めろ!」
大きな声が裏通りに響き、誰かの駆けて来る足音がした。
男は舌打ちすると、逃げるように去っていった。
だが、声も出ないまま、体は硬直したよう。
(動けない……怖い……)
「大丈夫?」
震える体を、誰かが触った。
すると弾かれたように体が跳ねて、そのまま気を失ってしまった。
目が覚めた時は、病院で。
通りがかりの人が助けてくれたそうだった。
両親は心配のあまり、翔を入院させたようだ。
知らない男が、自分をSubと呼んだ。
そう話すと、すぐに色々な診察を受けて診断された。
翔は、その時、知ることになった。
自分は、Sub……そう呼ばれる人間なのだと。
「僕は……Sub?」
意味もわからないのに、恐怖だけが襲ってきた。
それからは、何日も男の夢を見た。
何もされなかったはずなのに、男は確実に翔の心を犯 していた。
自分の体を、男の手が這い回る幻を見る。
気が付けば、自分で裸になって、半狂乱になって泣いていることもあった。
あの強い視線には、逆らえない気がして、しっかりした体の男を見かけると怖かった。
もしも、言うことを聞いてしまったら、自分は好きにされてしまう。
男より体の小さかった自分の目の前には、男のものが膨らんでいるのが見えていた。
大切に過保護に育てられた美しい少年は、恐ろしい悪意と手の感触が、日に日に妄想の中で現実になった。
逃げるには、自分を偽り強いふりをしなければ。
誰も、近づけないように。
翔は、そう考える様になった。
続く
マトリョーシカでも、秘書と主人。。。(妄想中)