(BL/お山SO/妄想小説)
side 智
翔ちゃんは、カッコいいから毎年バレンタインは、沢山のチョコレートとプレゼントの山だ。
「翔ちゃんカッコいいな!」
この言葉に嘘はないけど。
「カッコ良くは無いけど、良いでしょ?」
ドヤ顔で笑うし。
俺は毎年、ドキドキしてそれを見守ってきたんだ。
会社の女に、翔ちゃんを取られたらどうしようって。
翔ちゃんは、義理チョコって言うけど、俺はわかるぞ。
女は、義理に1万もするチョコを渡さない。
翔ちゃんは、そんな値段も分かってないし。
そんな恐ろしいチョコは、俺がもらって食べてるんだ。
「智君、チョコ好きだなあ」
翔ちゃんは、俺が食べてると笑うけど。
相変わらず、鈍いから、チョコと一緒に入ってるメッセージも、カードも気が付かない。
チョコを片手に、総チェックする俺だ。
「くそー、何が、携帯番号だ。なんなんだ、このアカウントはっ……」
キレイに全部、ゴミ箱行きだぞ、ざまーみろっ。(怒)
翔ちゃんは、チョコに興味がないんだから。
だから、だから。
だから、俺も困ってるんだからっ。(泣)
***
とうとう、バレンタインデーだ。
翔ちゃんは、呑気に会社へ行ってしまって、関係なさそうだ。
学校に行くと、何人かから、チョコを貰った。
「櫻井(智)君、付き合ってる人がいないなら……」
「ごめん、付き合ってる人いるんだ」
「それって、後輩の二宮君?」
「は? 違うし。なんで?」
「みんな、言ってたから……」
知らなかった。
なるほど、ニノとばっかりいるからなあ。
そういうニノも、チョコは結構貰ってる。
今年は、貰った数の多い方が何か奢る約束だった。
「智さん、何個?」
「10個かなあ……」
「うふふ……俺の勝ちね、ご飯奢ってね」
「お前の11個のチョコの中の一個は、母ちゃんからだろ? ずるいぞ」
「お兄さん、くれないの?」
「え? (はっ)本当だ、貰ったこと無いや……」
ちょっと……ショックだった。
そっか、俺が貰っても良いのかっ。
「なんか……落ち込むかも」
「うわ……なんか……ごめんっ」
バレンタインデー。
男同士ならどうするのかなー。
ごめんねと謝るニノ。
「じゃあ、傷ついたお詫びに、奢るの無しね♪」
「あっズルーいっ!」
ニノは、可愛い。
俺が唯一認める友達で、親友だ。
いつだって、俺のそばに居てくれる。
翔ちゃんの次に、大切な子だった。
いつものような、バレンタインデー。
放課後、ニノといつも通りに、一緒に帰るつもりだったのに。
それは、叶わない事になるなんて、俺は知らなかった。
続く