嵐妄想小説
お山(OS)妄想
登場人物等全てフィクションです。
「夢で逢いたい」完結後の幸せな二人のお話♡
+++
母ちゃんと子供の頃の俺。
長いこと、親子2人だけで暮らしてた。
金もない、まだ若過ぎた母ちゃんは、苦労だらけだったと思う。
まだ子供みたいな年齢で、俺を産んでくれたから。
俺の父親である男に捨てられて、実家も追い出されたんだもん。
「母ちゃん、これ……なあに?」
「うふふ♡おぜんざいよ。智のために作ったの」
「お。おしるこ?」(諸説あり。汁の多いものが汁粉とか)
「そうとも言うかなあ。さ、食べてみて? 智に食べさせてあげたいの」
「……」
ニコニコしてる母ちゃん。
俺の前には、不味そうな小豆と餅だったらしい物体の入ったお椀。
……俺の母ちゃんは、料理が下手だ。
って言うか。
料理とは呼べないレベルだった。
でも、一生懸命作ってくれてた。
小さな台所は、とんでもないことになってるけど。
「いただきます」
うん、なんとなく味がする。
でも、おぜんざいらしい甘味がない。
小豆だけ鍋に入れて、お砂糖とか入れてないんだろうなあ。
「美味しい?」
「……うん」
あまりの不味さに、子供の俺は嫌いな食べ物が増える一方だったなあ。
……今では、懐かしい思い出。
+++
「わ。美味しそう」
テレビを見ていた翔の声が聞こえた。
「なに?」
読んでいた仕事の資料を置いて、翔の方を見て声をかけた。
「ほら、おぜんざい。最近食べてないなあ」
大型テレビの画面いっぱいに映る、湯気のたった……おぜんざい。
母ちゃんのぜんざいを思い出して笑ってしまった。
思えば、可愛い優しい母ちゃんだった。
貧乏だったけど、二人で幸せだったよ。
「えー? なになに?」
「昔を思い出した。母ちゃんが初めて作ってくれた日のこと」
「おぜんざい? 好きなの?」
「いや、嫌い」
「ええ? どう言う意味?」
俺は、いい思い出なんだけど。
翔は昔の話をすると、すぐ泣いちゃうんだ。
『智……苦労してたんだ。助けられなくて、ごめん』って。
普通の家で育った翔には、別世界なんだろうけど。
俺は、苦労だと思った事はない。
説明も面倒だし、話すのは、また今度。
「嫌いなの?」
「今は、多分好き」
「へ?」
「今は、俺が作るからね。翔が作るより美味しいと思う」
「え〜? なんか、やだ。その言い方」
「一緒に、善哉の材料買いに行く? 外で食べてもいいよ」
「あ、良いなあ。忙しいのに良いの?」
翔は、俺より年上なのに、すごく可愛い。
今じゃ、年上に感じない。
「良いよ。翔優先だから」
ホスト時代の得意技。色っぽく見えるように笑う。
翔は、ちょっと赤くなって。
「……ずるい。なんかヤダ」
「翔と一緒なら、なんでも美味しいもん」
「……もう///」
嘘じゃないし。
翔に、美味しいお善哉食べさせてあげたい。
「俺、やっぱ。母ちゃんに似てるかも」
「? 顔ならそっくりだよ?」
「そうだろうなあ」
きっと、あの日の母ちゃんと同じ顔で、俺は笑ってると思う。
母ちゃんの愛情を、改めて感じた。
『智に食べさせてあげたいの』
ありがとう、母ちゃん。
俺も、母ちゃんと一緒。
大好きな人に、食べさせてあげたいんだ。
これからも。
<end>