嵐BL妄想(お山OS)
登場人物等全てフィクションです
side 翔
智が現れて、驚いた。
2度と会えない、そう思っていたのに。
しかも。
「先生! 結婚して!」
昔の彼のようだった。
抱きしめられた腕の中で、舞う花びらが夢のように綺麗で。
俺は、何も言葉が出なかった。
もし、夢なら。
このままでいたい。
消える夢なら、尚更。
夢と一緒に消えたいと思った。
――――――
呆然とする俺に、智が言う。
「ねえ先生、返事は?」
「先生じゃないし……。先生じゃ答えられないよ」
我ながら、おかしな言葉だけど、本音だった。
智は、眉を困ったように下げて言う。
「翔、俺のこと……もう忘れた? 他にいい人でも……」
「いるわけないだろ!」
思わず叫んでしまう。
智だけなのに。
ぎゅっと、強く抱きしめ直されて。
「翔、結婚してくれる?」
「……」
「だめ?」
低い綺麗な声が、響いて震える。
「他の人がいるんじゃないの? あの女優さんとか……」
「ああ……あれは嘘」
「ど、どう言うこと?」
嘘って、何?
「翔って、変わんないなあ」
「はあ? もう分かんないんだけど!」
「ふふ……やっと怒ったね? やっぱり翔先生だ」
大混乱の俺は、呆然とするだけだった。
――――――
side 智
翔は、まるで変わらない。
若いままで、可愛い先生のままだった。
まだ、恋人もいないらしいことにホッとする。
相手がいたら、どうにかして奪わなきゃとか、チラッと考えてた。
そのまま翔の部屋へ入れてもらった。
「あのさ、あんまり見ないでよ///」
掃除してあるし汚くはないけど、雑然と物が多い部屋は変わっていない。
部屋のあちこちに、俺が担当した広告の商品が山のようで、ジンとする。
「こんなに買ってくれてるのは、俺のため?」
「……まあ、そう……だけど。ほ、欲しかったから」
恥ずかしそうに言うのが可愛い。
こんなお菓子、大量に食べないじゃん。
甘いの、嫌いでしょう?
色々な商品や、大切に飾ってあるポスターとか。
……涙が出そう。
ずっと、俺を追いかけてくれてたんだ。
「翔、ありがとう。会いたかった」
嬉しくて、抱きしめる。
「智……俺も。もう会えないと思ってたのに……」
ああ、やっと。
カズヤが言った通り。
簡単なことだった。
逢いたくて、逢いにくればそれで良かった。
気持ちは、言わなきゃ伝わらない。
「翔、愛してる」
驚いて顔を上げる翔。
「……」
何か言おうとする唇は、俺が塞いでしまった。
何度も、何度も、軽く口付ける。
壊れないように、優しく。
今度こそ、大切に守れると思う。
何年も、夢にみた瞬間だった。
夢が叶ったことを、カズヤへ伝えたい。そう思った。
『夢でしか逢えなくなるぞ』
声が聞こえて、今までのことが頭の中を走り抜ける。
翔が去った日。
翔の実家をのぞいた日。
母ちゃんに別れを告げた日。
ホストになった日。
カズヤに会った日。
翔の顔を見るたびに、苦しかった日々。
……やっと逢えたよ……カズヤ。
『俺が言った通りじゃん』
カズヤがそう言って、笑ってる気がした。
続く
自分で書いておいてなんですが・・・良かったです